本研究では、ウェアラブル型3次元動作解析装置を用いて、変形性膝関節症者における屋内環境と屋外環境による歩行時の運動特性や膝関節にかかる負荷について検討することを目的とした。対象は、変形性膝関節症症例19例(71.6±1.6歳、BMI 25.9±0.8、男性7名、女性12名)と健常高齢者20名(70.6±1.7歳、BMI 22.0±0.8、男性11名、女性7名)とした。歩行解析は、慣性センサを左右それぞれ大腿部、下腿部、足部に1つずつ装着し、さらに、荷重計を搭載した靴を履いて行った。屋内歩行解析は、平均気温24.3±0.5度、フローリングの床材で平地直線7mの歩行路を使用した。屋外歩行解析は、平均気温10.0±3.2度、タイル状の床材で平地直線7mの歩行路を使用した。杖などの歩行補助具は使用せず、それぞれ同一日に各6回試行した。歩行解析は、膝関節と股関節の運動学的変数を用いて、測定環境(屋内と屋外)と測定肢(患側と反対側、健常者)を要因に、統計学的検討を行った。結果は、膝関節と股関節の運動学的変数に測定環境と測定肢に交互作用はなく、主効果は、測定肢間で健常者と患側、反対側に、最大膝関節屈曲角度(62.2±2.4度、46.5±2.4度、49.9±8.8度、p<0.01)と最大股関節屈曲角度(30.7±1.4度、22.1±1.4度、23.7±5.6度、p<0.01)に有意差がみられ、測定環境間で、最大股関節伸展角度(屋内8.6±0.6度、屋外10.9±0.6度、p=0.18)に有意差がみられた。屋内と屋外での測定環境の違いによる歩行時の運動特性は、変形性膝関節症者と健常高齢者で有意な差はみられなかった。
|