研究課題/領域番号 |
20K19376
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷口 匡史 京都大学, 医学研究科, 助教 (00827701)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 早期膝OA / 骨格筋変性 / 筋内脂肪浸潤 |
研究実績の概要 |
初年度(2020年度)には、地域在住高齢者に対してMRIや身体機能計測を実施した。2021年度は、その縦断観察期間となるため、初年度に計測したデータの分析を中心に研究を進めた。地域在住高齢者50名のうち、整形外科医により早期膝OAと診断された19名と健常対照群31名について、MR画像より大腿四頭筋の筋量および筋質評価を行った。筋量指標として、T1画像を用いて、大腿四頭筋各筋の筋体積を算出した。また、筋質指標として、Dixon法を用いて、大腿四頭筋各筋の筋内脂肪割合を求めた。また、膝関節機能尺度してKnee Society Score (KSS)2011日本語版を用いて、機能障害と膝症状を評価した。統計分析の結果、大腿四頭筋各筋の筋体積には、早期膝OA群と対照群の間に有意差を認めなかった。一方、筋内脂肪割合は早期膝OA群の内側広筋において有意に高値を示したが、大腿直筋や中間・外側広筋には有意差を認めなかった。つまり、早期膝OA患者の筋質変性は、内側広筋の筋内脂肪浸潤によって特徴づけられることが示唆された。また、KSS機能・症状スコアを従属変数とした重回帰分析により、内側広筋の筋内脂肪浸潤は、機能障害や膝症状の悪化に有意に関連することを示した。以上の結果より、早期膝OA患者の骨格筋変性を検出するイメージングバイオマーカーとして、内側広筋の筋内脂肪浸潤の計測が有用であることが明らかとなった。横断的にこの関連を示唆したが、今後は縦断的にも調査を継続し、軟骨減少との関連や身体活動による筋変性と軟骨減少の媒介作用について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、横断分析の結論を得るに至った。これは当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、早期膝OA患者の骨格筋変性の特徴について明らかにすることができた。今後は、骨格筋変性、とりわけ内側広筋の筋内脂肪浸潤と軟骨減少との関連は十分に検討されていないため、この関係を明らかにすることが必要である。骨格筋MRIの撮像と同時に軟骨撮像を行っており、データは取得済みである。軟骨の減少といった変性の評価法は存在するが、その評価法の改良を行っている段階にあり、改良後に骨格筋変性との関連を分析する計画である。 また、縦断調査を行い、内側広筋の筋内脂肪浸潤が軟骨変性に影響を及ぼすかを検証する。2022年度にその調査を実施する予定であり、縦断計測を行った後、この因果関係を明らかにすることを目標としている。縦断変化には、身体活動が影響すると予想されるが、これまでに身体活動の媒介作用を含め、骨格筋変性と軟骨変性の影響をみた先行研究は見当たらない。すでに初年度の計測時に身体活動を計測済みであることから、こちらも縦断計測の完了により、この影響を明らかにすることが可能になる。 以上より、順調に研究が進捗しており、この推進方策にて当初計画の完遂が可能であると予想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大に伴い、情報収集および学会発表の確保が困難であり、主に旅費の支出が当初予算よりも大幅に削減されたことによる。次年度は、本課題の最終年度のため、情報収集や成果発表の機会増加が見込まれるため、それらへの捻出が必要となる。
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