本研究は、不全麻痺を呈する不完全脊髄損傷を対象に、麻痺肢の減弱した随意筋活動を使って、損傷より下位の脊髄を電気刺激する筋ー脊髄間人工神経接続を開発し、脊髄損傷後の運動機能の回復と機能回復に内在する神経機序を解明することを目的としている。 当該年度は、頸髄C4/C5損傷によって上肢の不全麻痺を呈したサルに麻痺肢の筋活動依存的に損傷より下位の頸髄を刺激する筋ー脊髄間人工神経接続によるリハビリテーションを行っている最中に取得した脊髄からのアウトプット、一次運動野神経活動、行動データの解析を終えた。その結果、筋ー脊髄間人工神経接続によるリハビリテーションは脊髄損傷後の運動機能を回復させること、その際、脊髄からのアウトプットは上昇し、一次運動野神経細胞活動の変調は減少することがわかった。これらの研究成果は、第45回日本神経科学大会および第16回モーターコントロール研究会で発表した。 また、上記の実験を行う過程で得られた結果である「健常サルの随意運動中の脊髄刺激は、150-1350μAの刺激強度を用いることで、随意筋活動およびトルクをブーストできる」について、論文を出版した。
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