研究課題/領域番号 |
20K19389
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
長坂 和明 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (70833812)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 後部島皮質 / 経頭蓋直流電気刺激 / リモート制御 / 安静時脳機能結合 / 可塑性 / ニューロモジュレーション / 小脳皮質 |
研究実績の概要 |
慢性疼痛疾患患者およびその動物モデルを対象とした研究から、島皮質の活動が病的な疼痛知覚に関連していることを示すエビデンスが示されている。本研究の目的は脳の深い場所に位置する島皮質の活動を遠隔に制御し、感覚知覚を変容させる皮質電気刺激手法を開発することである。前年度に行ったfMRIによる安静時脳機能結合の結果では、右の島皮質の活動動態は、同側半球の背外側前頭前野と正の相関があり、一方で同側半球の補足運動前野および両側の小脳皮質とは負の相関関係があることが明らかになっていた。2021年度では、この中で最も強く負の相関関係を示していた左の小脳皮質を電気刺激のターゲットとし、当該領域に微弱な直流電気刺激を行うことで、温熱刺激に対する疼痛閾値の変化が生じるのか検証した。実験は21名の健常成人を対象に行った。左の小脳皮質に経頭蓋直流電流刺激用の電極を設置し、2.0mAの強度で20分間刺激した。その前後、および刺激中にペルチェ素子を用いて前腕部に温熱刺激を与え、温熱痛閾値(痛みを知覚した温度)および熱耐性閾値(痛みに耐えきれない温度)の評価をそれぞれ行った。小脳電気刺激のコントロール刺激として、刺激開始30秒だけ刺激する条件も設けた。また閾値計測の別日に安静時脳機能結合をMRIで計測し、各個人の閾値と小脳-島皮質間の機能的結合強度との関連を調べた。これら検証の結果、小脳への経頭蓋直流電流刺激は同側前腕の温熱痛閾値を下げることを示唆する結果を得た。しかしながら、個人ごとの小脳-島皮質間の機能的結合強度との関連は明らかにできなかった。これら結果は、小脳への電気刺激が間接的に島皮質の機能を変調させたことを示唆する。これらを踏まえ、島皮質でどのような活動変化が生じたのかを特定することが次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、fMRIによる安静時脳機能結合の解析と、ターゲット領域に対する電気刺激による疼痛閾値評価を終えている。本研究では安静時脳機能結合による機能的な神経ネットワークの可視化とトラクトグラフィーによる構造的な神経ネットワークの可視化を実施する予定であったが、後者の撮像には撮像装置のパラメータ調整に時間を要しており実施できていない。このような解決するべき課題はあるものの、計画通りに進行しているため”おおむね順調に伸展している”とした。
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今後の研究の推進方策 |
MRI装置内で小脳への直流電気刺激を実施し、島皮質の活動がどのように変調し、どの程度それが持続するのかを調べる。また小脳への交流電流刺激が閾値にどのように作用するのかを検証する。これら結果をまとめ論文化する作業に取り組む。
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