研究課題
本研究は急性呼吸不全患者の筋異化亢進と全身炎症による筋の酸素消費との関連を明らかにすることで,急性呼吸不全患者の筋異化亢進(筋力低下)を早期発見できる近赤外線分光法(NIRS)による評価方法を開発することである.当該年度は急性呼吸不全患者のNIRSと超音波による大腿四頭筋の筋厚を連日測定し,徒手的評価の筋力とNIRSの変化量と筋厚の減少との関係性を明らかにする.ICU入室後48時間以内にNIRSを用い初回の組織酸素飽和度(tissue oxygen saturation;StO2)と超音波による大腿四頭筋の筋厚を評価し,徒手的な筋力測定のMRCの測定が可能となるまで隔日で評価した.測定期間中のStO2と筋厚の最低値を採用した.対象は急性呼吸不全患者14例で,内訳は呼吸器疾患:5例,心臓外科手術後:4例,外科術後:3例,消化器疾患:2例であった.急性呼吸不全時の呼吸管理は,非侵襲的人工呼吸管理:2例,挿管人工呼吸器:12例(うち高頻度振動換気療法HFOV: 2例,挿管人工呼吸器+体外式膜型人工肺ECMO:1例)であった.結果:対象14例の徒手的筋力のMRCは55.2±6.9,筋厚は10.9±3.1mm,StO2の最低値50.4±2.1%であった.MRCの筋力と筋厚には相関関係を認めなかった(ρ=0.30, p=0.10).しかし,MRCの筋力とStO2の最低値は相関関係を認めた(ρ=0.44, p=0.02).意識レベルが低い患者や重症患者で徒手的に筋力を測定できない急性期の状況から,NIRSによるStO2測定は骨格筋評価として有用である可能性が示唆された.
3: やや遅れている
現状のコロナの状況下の集中治療室では,COVID-19の治療が最優先とされており,同意が得られる対象患者の募集に難渋している.また,同意が得られた対象患者においても,COVID-19の感染リスクが高い状況により,研究の続行を断念する状況があり,研究遂行するための対象の募集に難渋している.
次年度は,前年度の対象患者の募集を図り研究を遂行していく予定である.さらに,急性呼吸不全患者の筋組織酸素飽和度と超音波による大腿四頭筋の筋厚を測定し,集中治療室を退室時のADLや筋力,離床状況を評価し,測定指標との関係を明らかにし,大腿四頭筋の筋組織酸素飽和度と筋厚の指標の有用性を明らかにしていく予定である.
COVID-19の状況下で,対象患者の募集の難渋のため,超音波診断装置の購入を実施していないことや,施設へのデータ測定のための出張,情報収集のための学会参加などの出張回数が予定より少なくしなければならなかったためである.次年度は,超音波診断装置などの機器の購入や,施設へのデータ測定のための出張を多くする予定であり,得られた結果の公表のための学会参加などを実施していく予定である.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件)
Archives of Gerontology and Geriatrics
巻: 99 ページ: 104582~104582
10.1016/j.archger.2021.104582
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌
巻: 30 ページ: 211~216
10.15032/jsrcr.30.2_211
臨牀と研究
巻: 99 ページ: 359~363
Clinical Biomechanics
巻: 89 ページ: 105477~105477
10.1016/j.clinbiomech.2021.105477
Dysphagia
巻: 37 ページ: 636~643
10.1007/s00455-021-10314-3
ERJ Open Research
巻: 7 ページ: 00321~2021
10.1183/23120541.00321-2021
The Clinical Respiratory Journal
巻: 15 ページ: 1201~1209
10.1111/crj.13427
慢性疼痛
巻: 40 ページ: 97~102
人工呼吸
巻: 39 ページ: -
リハビリテーション科学ジャーナル 16: 39-51, 2021
巻: 16 ページ: 39~51
理学療法湖都
巻: 40 ページ: 12~15
理学療法ジャーナル
巻: 55 ページ: 523~529
理学療法
巻: 38 ページ: 326~332
巻: 38 ページ: 632~639
PTジャーナル
巻: 55 ページ: 1378~1382