研究課題/領域番号 |
20K19392
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研究機関 | 聖隷クリストファー大学 |
研究代表者 |
有薗 信一 聖隷クリストファー大学, リハビリテーション学部, 教授 (70713808)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 急性呼吸不全 |
研究実績の概要 |
本研究は急性呼吸不全患者の筋異化亢進と全身炎症による筋の酸素消費との関連を明らかにすることで,急性呼吸不全患者の筋異化亢進(筋力低下)を早期発見できる近赤外線分光法(NIRS)による評価方法を開発することである.当該年度は急性呼吸不全を発症してから72時間以内にNIRSを測定し,その後に患者が覚醒し座位以上の運動が可能となった時点のICU-AWの発症(筋力低下)を検討する.ICU入室後48時間以内と退室時にNIRSを用い初回の組織酸素飽和度(tissue oxygen saturation;StO2)と超音波による大腿四頭筋の筋厚を評価し,徒手的な筋力測定のMRCの測定が可能となるまで隔日で評価した.対象は挿管人工呼吸器管理した急性呼吸不全患者27例であった.結果:対象27例は,68.6歳で初回時の人工呼吸管理のFiO2は40.2%であった.18例の患者がICU退室時に生存し(66.7%),9名が死亡した.18例の生存患者のICU入室時のStO2は49.2±10.3%であったが,ICU退室時のStO2は52.5±9.0%と有意に高値を認めた(p < 0.05).生存した18例中,ICU退室時に歩行を自立した患者は16例であった(88.9%).死亡した9例では,ICU入室時のStO2は39.1±11.1%で,ICU退室時のStO2は43.6±9.1%であった.ICU入室時のStO2では死亡した患者の方が有意に低値であった(p < 0.05). 挿管人工呼吸器管理した急性呼吸不全患者では,徒手的に筋力を測定できない急性期の状況から,NIRSによるStO2測定は骨格筋評価として有用である可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現状のコロナの状況下の集中治療室では,COVID-19の治療が最優先とされており,同意が得られる対象患者の募集に難渋している.また,同意が得られた対象患者においても,COVID-19の感染リスクが高い状況により,研究の続行を断念する状況があり,研究遂行するための対象の募集に難渋している.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,前年度の対象患者の募集を図り研究を遂行していく予定である.さらに,急性呼吸不全患者の筋組織酸素飽和度と超音波による大腿四頭筋の筋厚を測定し,集中治療室を退室時のADLや筋力,離床状況を評価し,測定指標との関係を明らかにし,大腿四頭筋の筋組織酸素飽和度と筋厚の指標の有用性を明らかにしていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の状況下で,対象患者の募集がしているためや施設へのデータ測定のための出張,情報収集のための学会参加などの出張回数が予定より少なくしなければならなかったためである.次年度は,施設へのデータ測定のための出張を多くする予定であり,得られた結果の公表のための学会参加などを実施していく予定である.
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