研究課題/領域番号 |
20K19393
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
上原 信太郎 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (30725130)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 運動機能回復 / 神経生理学 / 上肢 / 神経興奮性 / 到達運動 / 経頭蓋磁気刺激 |
研究実績の概要 |
脳卒中発症後、運動機能は早期より改善し、その後も数ヶ月に渡って穏やかな回復曲線を描く。この改善の背景にある神経機序の一つとして、神経システムの機能的変化、とりわけ神経興奮性の状態(興奮と抑制)変化とそれによって誘導される構造的変化(実作発芽、樹状突起分岐、シナプス形成など)の関与が示唆されている。本研究は、脳卒中患者を対象に、運動皮質内の興奮性および抑制性神経回路の状態を非侵襲的に評価し、発症後に見られる運動機能改善との関係性を明らかにすることを目的とする。 2020年度は、COVID-19蔓延の影響によりデータ計測を中断せざるを得ない状況にはあったものの、実験環境の再整備などの手続きを経て、患者データ計測を少しずつ進めることが可能であった。現在までの横断的検証により、脳卒中発症後には損傷側半球対側の運動機能が低下し、また、損傷側一次運動野内の抑制性神経回路の興奮性が非損傷側のそれに比較して低下するという特徴を有していることが示唆されている。加えて、上肢運動用ロボット(KINARM)を用いた麻痺側上肢の到達運動を詳細に分析することで、特に重度の運動麻痺を呈した患者群にみられる運動機能の改善には運動方向特異性、すなわちある方向への運動量が優先的に増加し、それに追従するように別の方向への運動量が増加する(運動の改善)、という特性が存在することが示唆されている。 次年度以降もデータ計測を継続し、神経生理学的特性と運動機能との関係性検証を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19蔓延の影響によりデータ計測を中断せざるを得ない状況にはあったものの、実験環境の整備等の手続きを経て、その後の患者データ計測はおおむね順調に進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、引き続きデータ計測・集録を継続し、神経生理学的特性と運動機能との関係性検証を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、COVID-19の感染拡大による国内および国家間での移動制限により、予定していた現地での学会参加や研究打ち合わせにかかる旅費を計上できなかったことによる。次年度も同様の状況に直面する可能性も考慮し、研究物品を拡充するなど項目割合を変更して予算を執行する予定である。
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