KCC2発現変化が脳損傷後のシナプス再編と運動機能の回復に与える効果の解明

2021 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K19395
• 研究機関: 豊橋創造大学
• 研究代表者: 中村 佳代 豊橋創造大学, 保健医療学部, 講師 (70800572)
• 研究期間 (年度): 2020-04-01 – 2023-03-31
• キーワード: 脳梗塞 / シナプス再編 / KCC2

研究実績の概要

本研究では、脳梗塞とその後のシナプス再編におけるKCC2の役割を解明することを目指している。具体的には、げっ歯類の脳卒中病態モデルを用いて、脳梗塞後のKCC2発現低下（既知）が、シナプスの再編と運動麻痺ならびに運動機能の回復に与える影響について、シナプスの形態学的変化とマウスの行動学的変化を組み合わせて検証している。
2020年度は、主な計画であった脳梗塞の病態モデルの作製およびGolgi-Cox染色法を含む組織化学法を実施した。梗塞巣は、LD光源（532nm波長）とコリメートレンズを用いることで、再現性よく作製できることを確認した。マウスの運動麻痺等の機能的変化はグリッド歩行試験、ビーム歩行試験、ラダー歩行試験を用いて行った。マウスの模擬的リハビリは、強制回転かご(1,5～40m／min)を用いることで運動負荷を一律に与えられることを確認した。2021年度は脳梗塞対側領域、脳梗塞周辺領域に加え、運動皮質とシナプス結合の強い前頭葉領域を用いて脳梗塞後のスパイン密度と運動機能変化の関係性を検討した。現在、2021年度の引き続きの内容に加えて、KCC2の発現量の制御のため、病態モデルマウスを用いたMicro infusion pumpの体内挿入を試みている。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまで、①再現性のある病態モデルマウスの作製、②行動タスクにおける評価法の設定、③KCC2発現変化の確認、④脳梗塞対側領域と脳梗塞周辺領域、左右の前頭葉領域におけるスパイン密度と行動との関係性について検討してきた。主に2021年度はシナプス再編が生じる領域の特定に多くの時間を割いた。本研究は2年計画で実施され、2021年度はその2年目に当たる年であったが、2020年からの新型コロナウイルス感染症の発生により計画に遅れが生じた。現在、当初2年目に実施を予定していた生体マウスを用いたMicro infusion pumpの体内挿入を試みている。今後、KCC2の発現量の制御を行いKCC2の発現変化とシナプス再編の関係性を明らかにしていく予定である。

今後の研究の推進方策

2022年度は、前年度からの引き続きで、脳梗塞後の病態モデルマウスを用いた強制回転かご運動とKCC2の発現量の変化の関係性を検証していく。加えて、生体動物を用いてMicro infusion pumpの体内挿入によるKCC2の発現量の制御を行い、KCC2発現とシナプス再編との関係性を明らかにしていく。予定以上の時間を多く必要とする場合、計画は一部変更して、論文作成を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

本研究は2年計画で実施する予定であったが、2020年からの新型コロナウイルス感染症の発生とその拡大の影響を受け、計画した通りのエフォートで研究を推進することが困難であった。申請書作成時点での計画に遅れが生じたため、次年度の使用額が生じている。2022年度の計画として、引き続き、これまで同様にマウスの購入および実験に用いる試薬等の消耗品の購入を予定している。加えて、論文作成による校正等の費用を計画している。