研究実績の概要 |
本研究では、実験的な侵害刺激を用いた「恐怖条件付け」実験系を用いて、健常人と慢性痛患者とで痛みに対する恐怖の獲得と消去の過程がどのように異なるかを検証し、痛みの慢性化の病態解明の一助とすることを目的としている。最も大きな特徴は「恐怖条件付け実験」を同一対象者に2日間続けて実施したり、3週間のリハビリテーション介入前後で実施することで、縦断的な比較を行う点である。過去に「恐怖条件付け」実験を用いた健常成人と慢性痛患者の比較研究は他にも存在するが、実験データの取得ポイントを複数日設けて検証した研究はない。 令和2年度は、「恐怖条件付け」実験系の確立のため、刺激の提示方法、ならびに恐怖反応を評価する生理反応の取得方法の検討を行った。まず刺激の提示方法として、刺激制御ソフトPresentation (Neurobehavioral systems, USA)と生体電気刺激装置(竹井工業, Japan)を連動、視覚刺激に付随して任意のタイミング・強度で侵害刺激を制御できるシステムを構築した。また、痛みへの恐怖反応を評価する生理反応として驚愕反射に伴う眼輪筋の筋電活動(EMG)と皮膚コンダクタンス反応(SCR)をProcomp Infinity (Thought Tech, Canada)を用いて比較・検証した。結果、後者の方が安定して条件反応(侵害刺激を予測したときの反応)が出現することを確認できた。今後、この実験系を用いて複数日にわたるデータの取得を行い、信頼性・再現性を検証する。
|