本研究では、膝前十字靭帯再建後の関節拘縮と筋萎縮を予防・改善するために、1)どの時期から運動を開始すれば良いか、2)どの程度運動を行えば良いかを明らかにすることを目的とした。 ラットの膝関節に前十字靭帯再建術を行い、術後は関節固定(関節運動:なし)、通常飼育(関節運動:少)もしくはトレッドミル運動(60分/日、関節運動:多)のいずれかを行った。また、適切な運動開始時期を明らかにするために、術後2週関節を固定してその後自由飼育する群と、術後2週は自由飼育を行いその後トレッドミル運動を開始する群を設けた。術後2と4週で膝関節伸展可動域を測定し、関節拘縮を評価した。さらに、関節拘縮の一因である関節包の線維化を組織学的に評価した。また、筋萎縮を評価するために、大腿直筋と半腱様筋の筋線維横断面積を測定した。 前十字靭帯再建後、2週までに関節拘縮が生じ、4週まで持続した。術後の関節固定は滑膜の短縮を引き起こし、関節拘縮を悪化させた。2週の関節固定による悪影響は、その後の2週の自由飼育では打ち消すことができなかった。トレッドミル運動は、術後2週までに行うと関節包の線維化を誘導し、関節拘縮を悪化させた。一方で、術後2-4週でのトレッドミル運動は関節拘縮を改善した。 前十字靭帯再建後、2週までに大腿直筋および半腱様筋の筋線維横断面積が減少し、筋萎縮が誘導された。大腿直筋の筋線維横断面積の減少は4週までに自然回復したが、関節固定はこの回復を抑制した。半腱様筋の筋線維横断面積の減少は4週まで持続した。関節固定やトレッドミル運動は半腱様筋の筋線維横断面積に影響を及ぼさなかった。 これらの結果は、関節拘縮を改善するために、術後早期は適度な運動を行い、積極的な運動は2週以降に行うべきであることを示唆する。また、長期間(4週間)の固定は大腿四頭筋の筋萎縮の回復を抑制することを示唆する。
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