頭部外傷後などに、視覚・聴覚・触覚や侵襲刺激に対して持続的かつ再現可能性のある意図的/自発的な行動応答が3か月以上の間、持続的にも見られない状態は遷延性意識障害(PVS)として定義される。一定の割合でPVSから何らかの意思表示や刺激への応答が確認できる最小意識状態(MCS)に回復するが、PVSとMCSの間の明確な判断や診断は困難を極め、40%以上の誤診率が報告されている。本研究では、PVS症例の潜在的残存機能の適切な把握のための評価手法として、姿勢等の影響を受けにくく操作的な刺激呈示が可能であるヘッドマウントディスプレイ内蔵型視線計測装置による視線計測の活用を試みた方法を検討した。さらに脳波を用いて、残存する神経ネットワークの同定を図ることで意識障害症例の脳内基盤を明確化し、Neuromodulation技術による神経変調効果がどのように生じるかについて検討した。本研究成果は、将来的に遷延性意識障害を正確に評価する一助となる可能性が示唆された。
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