| 研究課題/領域番号 |
20K19406
|
|---|
| 研究機関 | 北里大学 |
|---|
研究代表者 |
安藤 雅峻 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (90844431)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
| キーワード | 高齢者 / 介護予防 / 運動能力 / 近隣環境 |
|---|
| 研究実績の概要 |
本研究課題では，地域在住高齢者の運動能力に影響する近隣環境の要因を同定し，高齢者を取り巻く近隣環境に応じた効果的な運動プログラムの選択手法を確立することを目的としている．2021年度に関しては，運動能力と近隣環境要因との関連性についての横断的検証の結果（前年度実施状況報告書）を，オープンアクセスジャーナルに投稿した．さらに，一部の取得可能であった追跡データを用い，1年間の運動能力の変化に対する近隣環境要因の影響を縦断的に検証した．
縦断研究の対象は，要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者624名のうち，1年後の追跡調査に参加可能であった者とした．運動能力の指標として，筋力（握力，等尺性膝伸展筋力），移動能力（5m快適歩行時間，Timed up and go test）を，ベースライン時および追跡時に評価した．近隣環境要因の指標には，International Physical Activity Questionnaire Environmental Module（IPAQ-E）日本語版を用いた．その他，基本属性，うつ状態や認知機能などの精神・心理的要因，対人交流頻度などの社会的要因を評価した．1年間の運動能力の変化に対する近隣環境要因の影響について，統計学的に検証した．
その結果，ロジスティック回帰分析において，物的環境であるレクリエーション施設へのアクセスが良いことと，社会環境である犯罪に対する安全性が良いことが，ともに1年後の移動能力の維持に影響することが示唆された．地域在住高齢者における将来の運動能力を予測するうえで，近隣環境の物的および社会的側面を双方の視点から評価することが必要であると考えられた．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題においては，運動能力の低下あるいは維持・向上を予測し得る近隣環境要因を同定することが第一に必要である．そのためには，縦断研究デザインによる検証が不可欠である．2020年度に実施した分析では，ベースラインデータを用い，運動能力と近隣環境要因との横断的な関連を確認することができた．さらに，2021年度は，一部の取得可能であった追跡データを用い，限定的ではあるが縦断的検証を行った．しかし，今日の新型コロナウィルス感染症流行のため，2020年度は予定していた追跡調査が全て中止，2021年度はようやく部分的に調査が再開された段階である．したがって，本研究課題については，追跡調査の実施に難航しているため，全体的にはやや遅れていると考えている．
|
| 今後の研究の推進方策 |
現在までの研究実績については，学会発表・論文投稿を通して積極的に成果を公表していく予定である．さらに，運動能力と近隣環境要因との因果関係を縦断研究によって明らかにするため，2020・2021年度に取得することのできなかった追跡データの収集を行う．しかし，新型コロナウィルス感染症の問題で，現在の計画通りには進められない可能性もあり，その際には研究計画を再考していきたいと考えている．
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
2020・2021年度は，新型コロナウィルス感染症の流行により計画していた調査を実施することができず，調査運営費を計画通りに支出できなかった．同様に，調査および学会参加のための旅費が支出できなかった．次年度においては，当初より計上していた調査運営費，解析費（ソフトウェア導入含む），研究成果発表費として計画的に予算を執行していきたいと考えている．
|
