膝前十字靱帯(ACL)再建術後選手の再損傷を減らすため、スポーツ復帰前のリスクスクリーニングは必須であり、適切な復帰許可基準の制定がスポーツ医学界の課題である。国際的に最も使用されている片脚ホップ距離テストは非術側に対する術側機能の過大評価につながりやすいという問題点がある。この問題点を片脚垂直連続ジャンプ中の跳躍高と接地時間で算出するReactive strength index(RSI)が解決しうるということが、これまでの申請者らの調査でわかってきた。次の段階として本研究では、ACL再建術後選手の片脚垂直連続ジャンプ中RSIの非対称性が、ジャンプ着地中膝外反に代表される再損傷リスクのバイオメカニクス要因と関連するという仮説を基に分析する。本研究は片脚垂直連続ジャンプ中RSIを、ACL再建術後選手における国際標準的なスポーツ復帰基準の新たな指標として加えるための基盤となるものである。
ACL再建術後選手のスポーツ復帰許可基準として代表的な等速性膝筋力と、当該研究で着目している片脚垂直連続ジャンプ中のRSIとの関連性を明らかにするため、診療データを整理・分析した。分析の結果、等速性膝伸展筋力と片脚垂直連続ジャンプ中RSIは中等度以上相関することが明らかとなった。また、ACL再建術後選手の等速性膝伸展筋力と関連することが報告されている変数(年齢、性別、競技レベル、術後経過日数、主観的膝機能)も加えた重回帰分析においても、片脚垂直連続ジャンプ中RSIは最も関連する変数として抽出された。この分析により、片脚垂直連続ジャンプ中RSIが主要な膝機能と関連する根拠を示した。これらのデータは、英語論文化し国際科学雑誌へ投稿済みで、現在査読段階にある。
片脚垂直ジャンプ中RSIのバイオメカニクス変数との関連を調査するための計測環境を整備し、ACL再建術後選手と健常選手のデータを収集した。
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