各重症度の変形性膝関節症(膝OA)患者における筋・関節動態の特徴を明らかにすることを目的に2つの研究を実施した。 1つ目の研究として、軽度から重度の膝OA患者を対象に10年間の縦断変化を調査し、ベースライン時の歩行特性が将来の膝OA進行に与える影響を調査した。まず、ベースライン時の膝関節負荷を調査するため、歩行中の外部膝関節内反モーメントと屈曲モーメントに加えて、それらの合成モーメント(KTM)を算出した。さらに、AnyBody Modeling Systemにより、各患者の身体特性や関節構造を考慮した筋骨格モデルを新たに構築し、歩行中の筋張力特性や膝関節の内側・外側コンパートメントにかかる圧縮力(KCFmed、KCFlat)を推定した。これらの膝関節負荷の指標と、質問紙によって定量化された縦断的な疾患進行との関連を調査した結果、ベースライン時のKTMやKCEmedが主に将来の疾患進行に関連することが明らかになった。 2つ目の研究として、関節構造変化の少ない健常高齢者や早期の膝OA患者を対象に、早期の軟骨変性に関連する膝関節負荷の指標を調査した。歩行中の膝関節負荷を評価するため、研究1と同様にKTM、筋張力、KCFmed、KCFlatを評価し、さらにKCF全体に対するKCFmedの割合(KCFratio)を算出し、圧縮力の内側偏移量を定量化した。また、MRI画像を用いて超早期の軟骨変性を評価するために、T2緩和時間もあわせて評価した。T2値と膝関節負荷の各指標との関連を調査した結果、軟骨の早期変性にはKCFratioが関連しており、歩行中に膝関節の圧縮力が内側に偏移している対象者ほど軟骨変性が増大していることが明らかになった。 以上より、筋骨格モデルを用いた膝関節の詳細な評価が膝OAの進行予測に有用である可能性が示された。
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