近年、加齢や廃用などに起因するサルコペニアに関する研究が始まっているが、嚥下関連筋の領域における報告はほとんどない。本研究では嚥下関連筋の筋萎縮の病態解明を目的として成熟群及び加齢群のラットモデルを用いて組織学的及び分子生物学的に検討を行なった。成熟群及び加齢群ともに 10匹を使用して、酸化ストレスマーカーであるスーパーオキシドディスムターゼ(Cu/Zn-superoxide dismutase: SOD-1)と廃用性筋萎縮に伴い発現量が減少する血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial grouth factor: VEGF)を、下咽頭収縮筋を用いてそれぞれ測定した(測定値:対象をコントロールで割った値)。分子生物学的検討の結果、SOD-1は成熟群で0.41±0.15、加齢群で1.86±0.07であり、有意に増加していた。また VEGFは成熟群で0.72±0.12、加齢群で3.86±0.10であり、有意に増加していた。組織学的検討の結果、筋繊維横断面積は加齢群/成熟群で81.7±3.1%と有意に減少していた。本研究の結果、加齢に伴う酸化ストレスが嚥下関連筋の筋萎縮に関与している可能性が示唆された。
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