令和4年度に、脳卒中片麻痺者2例(症例1:79歳女性、発症後9年、症例2:83歳女性、発症後17年)を対象として、ステップ反応の運動学的特性を従属変数、体幹機能トレーニングによる体幹機能の変化を独立変数とした、ABA型シングルケースデザインによる介入研究を行った.体幹機能トレーニングとして、6週間のセルフエクササイズを指導した.症例1では介入前のTrunk Impairment Scaleが低値であり、介入後に最小可変変化量を超える体幹機能の改善を認めた.これに伴い,外乱刺激からステップ終了までの時間が短縮し、ステップ反応中の体幹最大角速度が減少した.一方、症例2では介入前のTrunk Impairment Scaleが症例1と比べ高値であり、介入後に最小可変変化量を超える体幹機能の改善を認めなかった.また、ステップ反応の運動学的変数の変化は見られなかった.先行研究では、体幹機能トレーニングによって脳卒中後遺症者の多様なバランス課題のパフォーマンスや歩行の運動学的変数を改善させることが報告されている.本研究の結果から、体幹機能の改善がステップ反応の運動学的変数を改善させることが示唆された.ただし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け,リクルートに協力いただく予定の施設への立ち入りが制限された状態が継続し,多くのサンプルを対象とした介入が実施できなかった.本研究では、対象者の介入前の体幹機能の水準によって、いかにトレーニングの難易度を調整するかが課題であったが、今後の検証が必要である.
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