研究課題
変形性膝関節症の罹患者数は本邦において約800万人にも及び、国民病とも言える運動器疾患である。生体組織や細胞は外界からのメカニカルストレスを感受し、我々の生活する環境変化に絶えず適応しているが、変形性膝関節症においても関節軟骨への過度なメカニカルストレスが一要因となり関節構成体の変性に伴い緩衝作用は失われていく。一般的に体重(荷重ストレス)の増加は変形性関節症を進行させることが理解されてきたが、近年の医学研究では“関節の緩さ”という新たなメカニカルストレスが軟骨変性に関連深いことが報告されている。今回、「関節不安定性に基づく関節軟骨の潤滑機構破綻メカニズムの解明」をテーマに現在はin vitro研究を進めている。軟骨細胞の採取ならびに質的評価を行い、ラット軟骨より軟骨細胞の分散、並びに継代による形質転換ならびに細胞機能評価について完了している。特に、単層培養では、先行する研究の通りに、継代回数によって、軟骨細胞の機能が失われていき、mRNAやプロテオグリカン量についてもp1ないしp2継代までを軟骨細胞としての機能を有していることが限界である。このため、現在は3次元ゲル培養ならびに軟骨細胞の採取効率性に向けて検証を進めている。一方、関節不安定性に基づく関節軟骨の潤滑機構破綻メカニズムについては、細胞に対する不安定性状況を再現する試みを継続している。現在、異なる不安定性ゲルの準備ならびに基質の固さが異なる培養環境下での細胞培養を開発しており、予備研究を進めている段階である。
3: やや遅れている
実験を行うにあたり、ラット軟骨より軟骨細胞の分散方法の確立に時間を要した。また、正確なデータを取得するために、継代による形質転換ならびに細胞機能評価について評価を実施したため、研究に遅れが生じている。また、細胞環境の調整について、細胞に対する不安定性状況を再現する試みを開発しているため、実験環境の調整に時間を要しているところである。
軟骨細胞の採取については確立され、かつ細胞の質的状況についても担保できている。今後は、細胞の培地環境調整に着手し、コラーゲンゲルを用いたStiffnessの異なる環境下での軟骨細胞の機能的側面を評価する予定である。実験については遅れているが、今年度の実験計画については上記細胞環境調整が終われば、解析方法も既に確立しており、大きな遅延はないと予想される。
消耗品において、差額が生じた。次年度に調整する
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