身体活動による神経保護および認知機能の保持には、神経炎症の抑制が関与していると考えられている。また、神経炎症と脳内アミロイドβ(Aβ)は密接に関連していることが示唆されている。本研究は、身体活動の抗炎症作用による神経保護効果が、脳内Aβ蓄積の有無により異なるのかを解明することを目的としている。研究デザインは地域高齢者を対象とした2年間の縦断観察研究である。 2年目の本年度では、1年目で抽出した対象者に対する追跡調査を実施し、身体活動量、炎症性サイトカイン濃度、認知機能の繰り返し測定を行った。追跡調査に参加した対象者全体で縦断解析を行った結果、Aβの量的指標であるStandardized uptake ratio(SUVR)と記憶力の変化量との間に有意な相関関係が認められ、脳内Aβ蓄積量が多いほどその後の記憶力の低下が大きいことが改めて確認された。 最終的な解析として、脳内Aβ蓄積量によって群分けした縦断解析を行うために、現在データベースの整理を進行中である。本研究で得られる知見は、身体活動効果が現れやすい対象者の層別化など、今後の非薬物療法による認知症予防施策の効率化へ寄与し得ると考えられる。
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