研究課題/領域番号 |
20K19444
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高橋 郁文 金沢大学, 附属病院, 理学療法士 (30743835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 変形性関節症 / 関節軟骨 / ラット / 廃用性萎縮 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、実験動物としてラットを使用し、後肢懸垂によって膝関節軟骨に廃用性萎縮を惹起した後に外科的に変形性膝関節症(以下OA)を誘発することで、関節軟骨における廃用性萎縮がOA進行に及ぼす影響を組織学的に検討することである。 対象として9週齢のWistar系雄性ラット10匹を使用した。実験動物は5匹ずつ2群に分け、4週間の通常飼育後にOAを惹起するOA群と、4週間の後肢懸垂後にOAを惹起するHSOA群とした。実験期間はOA惹起後4週とした。OAは外科的に内側半月板を不安定化することで惹起し、後肢懸垂はワイヤーによる尾部懸垂方法を採用した。飼育期間後、膝関節の前額面標本を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色およびトルイジンブルー染色を実施した。その後、光学顕微鏡を用いて脛骨の関節軟骨に生じる組織学的変化をOARSI scoreおよびSubchondral bone damage scoreを用いて評価した。また、平均軟骨厚、基質染色性、軟骨細胞の密度、骨棘長を計測し、統計学的に解析した。 その結果、両群ともに術後4週間にて内側脛骨大腿関節の関節軟骨にOAに典型的な組織学的変化を認めた。その組織学的変化の範囲および深さはHSOA群の方が大きく、Maximum OARSI scoreおよびSummed OARSI scoreはOA群と比較して、HSOA群の方が統計学的に有意に高値であった(p = 0.0005およびp = 0.03)。なお、Subchondral bone damage score、平均軟骨厚、基質染色性、軟骨細胞の密度、骨棘長に関しては両群間に有意な差は認められなかった。 以上より、廃用性萎縮を呈した関節軟骨では変形性関節症の進行が早まることが明らかとなった。今後は短期および長期経過を明らかにすることで、関節軟骨の廃用性萎縮と変形性関節症の関連をより詳細に検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画通り、関節軟骨の廃用性萎縮と変形性膝関節症に関する組織学的解析が終了した。その途中成果を年度内に国内学会にて発表するとともに、国際誌へ論文投稿し、アクセプトされた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、関節軟骨の廃用性萎縮と変形性膝関節症に関する組織学的解析を行った。関節軟骨の廃用性萎縮に関する研究は、学術的・臨床的に有益な知見が得られる可能性が高い。したがって、当初の研究計画通り、初年度の研究基盤の上に、今年度の研究をさらに推進させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
初の予定より実験動物および実験に使用する消耗品に対する支出が少なくなったため。余剰金額については論文投稿およびオープンアクセス費用などに充てる予定である。
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