今年度の研究目的は、ラット後肢懸垂モデルを用いて脛骨軟骨に廃用性萎縮を惹起している過程で荷重もしくは歩行運動を行うことで廃用性軟骨萎縮の予防の可能性を組織学的および免疫組織化学的に明らかにすることであった。 対象として9週齢のWistar系雄性ラット20匹を使用し、実験動物は対照群、後肢懸垂群、荷重群、歩行運動群に分けた。対照群は4週間の通常飼育を、後肢懸垂群、荷重群、歩行運動群は4週間後肢懸垂下で飼育を行った。後肢懸垂はワイヤーによる尾部懸垂方法を採用した。また荷重群は非荷重飼育期間中に、1日1時間、週5日ケージ内で通常飼育を行うことで一時的な荷重を許可した。歩行運動群は1日20分、週5日トレッドミルを使用し、12m/分の速度で強制的に歩行運動を行った。飼育期間後、両膝関節の前額面標本を作成し、一般染色としてヘマトキシリン・エオジン染色およびトルイジンブルー染色を、免疫組織化学的染色としてⅡ型コラーゲン、アグリカン、MMP13、ADAMTS5に対する染色を行った。その後、光学顕微鏡を用いて、軟骨に対する評価として軟骨厚、基質染色性、軟骨細胞密度、層割合を計測した。また骨に対する評価として骨量と軟骨下骨厚を計測した。その結果、軟骨厚の減少および基質染色性の低下、非石灰化層の減少は荷重群では予防できなかったが、歩行運動群では予防することができた。また、基質染色性および軟骨細胞密度は両群において予防可能であった。しかしながら、骨量および軟骨下骨厚は両群において有意に低下したままであった。免疫組織化学的分析では、Ⅱ型コラーゲンおよびMMP13は両群において有意な変化を認めなかった。アグリカンは両群において有意に増加した。ADAMTS5は歩行運動群のみ有意に増加した。
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