研究課題/領域番号 |
20K19447
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小川 真人 神戸大学, 医学部附属病院, 理学療法士 (70787192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HMB / リハビリテーション栄養 / 心臓リハビリテーション / 心臓外科手術 / プレハビリテーション |
研究実績の概要 |
日本は、超高齢社会により心臓手術対象患者も高齢化している。そのため高侵襲である 心臓手術後の身体機能低下が大きな問題となっている。そこで本研究の目的は、高齢心臓外科患者における手術前からの積極的なβhydroxy-β-methylbutyrate (HMB)経口投与による新たな栄養介入が術後身体機能低下の抑制ならびに術後合併症の減少効果について検証することである。このHMB投与による影響を明らかにすることで、術前の栄養療法の標準化を図ることができ、かつ効果的なリハビリテーションの提供、患者の健康関連QOLの改善に大きく寄与すると考えられる。 本年度は研究開始の初年度であり、研究実施体制の整備と症例集積を主に行った。2021年4月末時点で、心臓手術患者患者28名をリクルートし、介入群14名と対照群14名にランダムに割り付けを行い、研究が進行中である。骨格筋量、6分間歩行距離、身体活動量、握力、膝伸展筋力、QOL(SF-36)、採血データを評価項目とし、baseline(開始前)、手術直前、手術後2週後に評価を実施している。本研究は中間解析は行わない予定であるため、統計解析は実施していない。 また本ランダム化比較試験の予備調査として、心臓手術患者のフレイル、身体機能について調査を行っている。729名(67.7 ± 13.7歳)の予備調査の結果、術前のフレイルの有症率は164例(24.7%)であった。フレイル患者は非フレイル患者と比較し、有意に栄養状態が低下しており、術後合併症(肺炎、再挿管、急性腎不全)が高率であり、また術後嚥下障害の発症率も有意に高率であった。 これらの予備調査の結果から術前のフレイル評価、介入の必要性が示された。今後術前のフレイルが術後短期、長期的に及ぼす影響を調査するとともに、HMB経口投与による栄養介入によるフレイル、身体機能改善効果について検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内に研究対象として、対照群100名、介入群100名、合計200名のリクルートが必要であるが、当年度にリクルートできた研究対象が、介入群14名、対照群14名、合計28名にとどまっている。その理由として、当院に紹介された心臓手術患者のうち、本研究の対象となる術前に2週間から4週間のHMB介入できる期間を確保することができる患者が少なく、研究から除外となってしまった患者が多かったこと、COVID-19蔓延に伴い、診療業務が影響を受けたことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も引き続き対象者をリクルートし、対象者を確保できるかが課題となる。関係診療科とさらに密に連携をとり、対象者のリクルートを推進していく予定である。 さらに、心大血管患者における栄養状態、フレイルに着目し、入院中さらには退院後の日常生活活動や再入院、心血管イベントの有無などの予後について長期的に検討をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)データ解析は研究代表者が自ら行ったことでそれ要する予算の削減につながった。また患者のリクルートが進んでおらず、HMB製剤の購入費用が計上できていないため。 (使用計画)次年度は、HMB製剤の追加購入、消耗品、旅費、論文作成に際して生じる英文校正代金および投稿費用に費やす可能性がある。そのため、次年度使用額は、それらの補填のため、次年度に持ち越して使用する予定である。
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