研究課題
日本は、超高齢社会により心臓手術対象患者も高齢化している。そのため高侵襲である 心臓手術後の身体機能低下が大きな問題となっている。そこで本研究の目的は、高齢心臓外科患者における手術前からの積極的なβhydroxy-β-methylbutyrate (HMB)経口投与による新たな栄養介入が術後身体機能低下の抑制ならびに術後合併症の減少効果について検証することである。このHMB投与による影響を明らかにすることで、術前の栄養療法の標準化を図ることができ、かつ効果的なリハビリテーションの提供、患者の健康関連QOLの改善に大きく寄与すると考えられる。現時点で、心臓手術患者患者44名をリクルートし、介入群22名と対照群22名にランダムに割り付けを行い、研究が進行中である。骨格筋量、6分間歩行距離、身体活動量、握力、膝伸展筋力、QOL(SF-36)、採血データを評価項目とし、baseline(開始前)、手術直前、手術後2週後に評価を実施している。本研究は中間解析は行わない予定であるため、統計解析は実施していない。また、心臓手術患者の栄養とリハビリに関する予備研究を進めている。フレイル患者は非フレイル患者と比較し、有意に栄養状態が低下しており、術後合併症が高率であり、また術後嚥下障害の発症率も有意に高率であった。さらに、嚥下障害を発症すると、術後の栄養状態も悪化し、長期的な予後も悪化することを明らかとした。これらの結果は、英文誌に採択され、掲載されている。これらの予備調査の結果から術前のフレイル評価、ならびにフレイルへの介入、さらには周術期の嚥下障害のスクリーニングを含めた管理・リハビリテーションの必要性が示された。今後HMB経口投与による栄養介入によるフレイル、身体機能改善効果について検討を行っていく。さらに栄養状態と口腔状態、並びに身体機能の関係性も検討しており、結果を解析中である。
3: やや遅れている
研究期間内に研究対象として、対照群100名、介入群100名、合計200名のリクルートが必要であるが、当年度にリクルートできた研究対象が、介入群22名、対照群22名、合計44名にとどまっている。その理由として、当院に紹介された心臓手術患者のうち、本研究の対象となる術前に2週間から4週間のHMB介入できる期間を確保することができる患者が少なく、研究から除外となってしまった患者が多かったこと、また、腎不全、肝不全などの重複疾患を有する患者が増加し、本研究から除外される患者が多かったこと、COVID-19蔓延に伴い、診療業務が影響を受けたことが挙げられる。また、影響介入で用いる食品がCOVID-19による影響で供給が滞っており、現在入荷の窓が立っていない。代替案も含め検討している状況である。
令和5年度も引き続き対象者をリクルートし、対象者を確保できるかが課題となる。関係診療科とさらに密に連携をとり、対象者のリクルートを推進していく予定である。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、研究施設において入院制限などの処置がされた場合は、リクルート期間を予定よりも延長し、データベース構築を行うことも検討する。これに伴い、予定していた研究期間がずれ込むことが予想される。その一方で、仮説生成の横断的解析や副次的検討について、暫定的なデータを用いて解析を進めて成果発信に繋げる予定であり、予備研究は実施中である。さらに、心大血管患者における栄養状態、フレイルに着目し、入院中さらには退院後の日常生活活動や再入院、心血管イベントの有無などの予後について長期的に検討をしていく予定である。
(理由)データ解析は研究代表者が自ら行ったことでそれ要する予算の削減につながった。また患者のリクルートが予想を下回っており、HMB製剤の購入費用が計上できていないため。(使用計画)次年度は、HMB製剤の追加購入、消耗品、旅費に費やす可能性がある。そのため、次年度使用額は、それらの補填のため、次年度に持ち越して使用する予定である。また、複数の論文投稿を予定しているため、英文校正費と論文投稿費の計上を予定している。
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