研究実績の概要 |
最終年度となる2021年度は、パーキンソン病の軽症例から重症例(Hoehn & Yahr分類II~IV)を対象に、第一背側骨間筋を対象に、高密度表面筋電図法を用いて運動単位の活動解析を実施した。また、内服薬の投与前後にて運動単位の活動解析を行い、内服薬が神経筋機能に及ぼす影響について定量的に評価を行った。 パーキンソン病患者は、発症初期から運動単位の活動動態に非対称性があることは昨年度までに報告してきたが(Nishikawa et al., European Journal of Neuroscience, 2021, Nishikawa et al., Journal of Integrative Neuroscience, 2022)、症状の進行に伴い、健常者が示す運動単位の活動とは真逆のパターンへと変化していくという知見を得ることができた。本知見は、骨格筋を制御する神経系の機能が症状の進行に伴い変化していくことを示唆しており、病態を理解する上で非常に重要な知見であると言える。 内服薬が運動単位の活動動態に及ぼす影響について検討するため、内服薬投与前後における外側広筋の運動単位の活動を対象に解析を行ったところ、内服薬投与により、運動単位の過剰な活動が抑制されることを定量的に検出することができた。本知見は、パーキンソン病患者における薬効を定量的に評価することができる手法として、臨床的な意義が高いものであるといえる。 研究全体として、パーキンソン病患者が呈する過剰な筋活動である筋強剛を定量化することで、病態の解明および薬効の新たな評価法としての応用を目的に研究を遂行した。本研究で得られた知見は、パーキンソン病患者が呈する神経筋機能の異常を数値として捉えることができる新たな評価手法として応用ができることを示唆するものであり、今後臨床応用に向けて発展させていきたい。
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