脳卒中後運動麻痺に対する運動療法において数多くの臨床報告がありエビデンスは確立しているものの,頻度や負荷量おいては明確な基準はなく,また解剖学的及び生化学的なメカニズムの解析は十分ではない.実臨床においても運動負荷が強すぎると痙性が悪化して,歩行バランスが崩れ,逆に運動機能が低下する例を多く経験する.運動コンプライアンス(総負荷量)と改善率は決してリニアな関係ではなく,運動コンプライアンスが高すぎると運動改善率は逆に低下する結果であった.本研究は,この現象を確認することを目標とした. 当初は,げっ歯類を使用した動物実験を実施予定であったが,コロナ感染症などの影響や私の異動もあり,動物実験が行える環境から外れたため,実際にヒトにおける臨床データを後方指摘に解析する研究に切り替えた.運動量と改善度は相関は弱く,それ以上に離床までの期間や脳血管障害の部位、年齢の相関が強よかった.運動コンプライアンス(運動実施回数/実施可能日)では,運動量より相関係数は高かった.調整因子を加え多変量解析を行うと脳血管障害の部位が独立した関連因子であった.しかし,運動の強度などは個人によって異なっており,本来の負荷量の検討はできていない.現在,強度をある程度一定にした前向き研究の実装を準備している.
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