研究課題/領域番号 |
20K19455
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
大石 斐子 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 助教 (60803351)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 構文 / 使用頻度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、失語症における文産生の障害メカニズムについて、統語機能および「文の使用」という観点から明らかにすることである。 初年度である2020年度は、文産生テストに使用する課題文と刺激画を作成し、テストの手続きについて検討した。まず、課題文を下記の手順で作成した。課題文で使用する動詞の候補について、語彙特性や構文の使用頻度を調査した。この調査には、国立国語研究所の各種コーパスおよびNTTコミュニケーション科学基礎研究所のデータベースを利用した。その結果から、語彙特性および構文の使用頻度を適切に統制できる動詞を抽出した。続いて、それらの動詞が含まれる文を用意した。各動詞につき、統語構造の難易度を変化させた複数の課題文を作成した。 次に、刺激画を作成した。文産生テストでは、参加者に刺激画を提示して発話してもらうため、課題文を引き出せるようなイラストが必要である。そのようなイラストを描くことが可能なイラストレーターを探し、作成を依頼した。研究の参加者は脳損傷を呈した患者であるため、できるだけシンプルで分かりやすいイラストになるよう、修正を繰り返した。 これらの作業を進めると同時に、文産生テストの手続きについても検討した。失語症では、統語機能が良好であっても、語が想起できないために文の発話に至らない場合がある。そのような患者の文産生能力が過少評価されないことが重要であるため、文字単語を併用するといった方策を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
課題文に採用する予定の動詞をデータベースで調査したところ、想定していた構文では十分な用例が集められないことが判明した。このため、調査対象の構文を検討し直す必要が生じた。また、刺激画を適切なものとするために、何度も細かな修正をする必要があり、当初想定していたよりも時間を要した。さらに、数名の健常者および失語症患者を対象に予備実験を実施し、文発話テストの手続きを確定する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により、特に失語症患者の協力を得ることが困難となった。以上の理由により、当初の研究計画より遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、健常者の協力を得て課題の妥当性を確認した後、数名の失語症患者を対象に予備実験を実施し、文発話テストの手続きを確定する予定である。その後、本実験に移行してデータ収集を開始する。新型コロナウイルス感染症対策が長期間にわたって必要となることが予想されるため、対面とオンライン会議システムの両方で実施可能なテスト方法を検討する。得られた結果は、中間報告として関連学会にて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画よりやや遅れが生じたため、予定していた検査用具の購入を見送った。2021年度に当該検査を使用できる目途が立ったため、2020年度残額は当該検査用具の購入に宛て、2021年度分の助成金は元々の計画どおりに使用する。
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