研究課題/領域番号 |
20K19455
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
大石 斐子 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 講師 (60803351)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 失語症 / 構文障害 / 統語機能 / 文の使用頻度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、失語症における構文障害のメカニズムについて、統語機能および「構文の使用頻度」という観点から明らかにすることである。当初は文の産生面について調べる予定であったが、2020年度から2021年度に実施した予備実験の結果から、文の使用頻度が構文障害に及ぼす影響を明らかにするためには文の理解面を分析する方が適切であることが判明したため、文理解テストを作成し実施することにした。 2022年度は、2021年度に完成させた文理解テストを用いて、失語症者のデータ収集を実施した。目標としたデータ数に至らず、十分な統計的解析をすることができなかったが、症例ごとの検討において、構文の使用頻度が失語症者の文理解に影響を及ぼすという予想通りの傾向が認められた。すなわち、失語症においては能動文より受動文の理解が困難であるとされるが、使用頻度が高い受動文は能動文と同程度に理解できた。これらの結果については、関連学会にて報告した。 なお、現在までに得られた結果から、構文の使用頻度が失語症者の文理解に及ぼす影響の大きさには個人差があることが分かっている。その要因については、脳損傷部位、失語症タイプ、合併する高次脳機能障害等に起因する可能性がある。しかしながら、現在までに得られたデータでは症例数が少なく、失語症タイプや脳損傷部位にも偏りがあることから、その要因について十分に分析することは困難である。このため、2023年度は、多様な症例からの協力を得ることを目指して、研究協力機関とより密な調整を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
失語症者を対象としたデータ収集を開始したが、新型コロナウイルス感染症の流行が継続していることにより、医療機関で協力を依頼する手続きに時間を要したり、協力予定者の離脱が断続的に発生したりしたため、十分なデータ数を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は失語症者と健常者を対象としたデータ収集を終了する予定であったが、いずれも目標数を満たさなかったため、2023年度もデータ収集を継続する。得られた結果は順次分析し、関連学会にて公表すると同時に、学術論文執筆の準備を進める。医療機関における新型コロナウイルス感染症の影響は暫く継続すると予測されるため、引き続きデータ収集機関に配置した連絡責任者と密に進捗状況を確認し、オンライン会議システムを利用してデータ収集を実施することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症流行の影響により、研究協力機関の担当者との打合せや、関連学会への参加の多くをオンラインで実施したため、予定していた旅費を使用しなかった。また、研究計画の遅れにより、2021年度に予定していた研究対象者への謝金を一部使用しなかった。2023年度はさらなるデータ収集を予定しているため、研究対象者への謝金にあてる他、関連学会での現地発表のための旅費等に使用する予定である。
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