【研究開始当初の背景】地域包括ケアシステムにおいては、リハビリテーション専門職(以下 リハ職)等を活かした高齢者の自立支援に資する取組が推進されている。しかし、リハ職の関わりの程度や内容に地域間の格差が大きいことが問題として指摘されており、住民主体の通いの場において、リハ職の支援能力を評価する尺度はない。 【研究の目的】本研究の目的は、住民主体の通いの場へ支援するリハ職が習得すべきコンピテンシー尺度を作成することである。 【研究の方法】本研究では、第1研究として、質的帰納的研究デザインを用い、通いの場への支援者としてのリハ職に必要なコンピテンシーを構成する概念を収集し、質問項目の選定を行った。次に、第2研究として、通いの場の支援に携わっているリハ職を対象に無記名自記式アンケート調査を実施し、第1研究において抽出した50項目案について6件法で回答を求めた。統計解析には、尺度の因子構造を検討するために探索的因子分析を実施した。また、共分散構造分析を用いてモデル適合度を確認し、尺度の信頼性、内的整合性を検証した。 【研究成果】第1研究では、通いの場におけるリハ職のコンピテンシーと支援プロセスとして、38概念、15サブカテゴリ、6つのカテゴリを見出した。第2研究では、回答のあった260施設(回答率59.1%)、607名を有効回答とした。探索的因子分析の結果、コンピテンシー尺度は、20項目からなる3因子構造であることが推測された。また、本尺度は良好な構成概念妥当性を有しており、十分な信頼性・妥当性を有していることが示された。 本研究により、住民主体の通いの場へ支援するリハ職には、支援者としての姿勢と知識、調停能力や臨床的技術が求められることが示された。今後、本コンピテンシー尺度を、リハ職が目指すべき方向性やその方向に進むべき指針として活用することで、支援の質の向上に繋がると考えられる。
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