転倒は要介護状態を招くものであり、その予防は社会的課題である。転倒に至った行動理由はトイレに関するものが最も多く、トイレ動作の適切な自立判定は転倒予防に重要である。 令和2年度は、研究責任者らが開発した、座位での足踏みと認知課題を同時に遂行するdual task stepping testを使用し、トイレ動作自立判定、転倒予測精度を検討した。急性期疾患治療目的で入院した65歳以上の高齢者92名を対象に実施した。結果は、dual task stepping testと転倒発生は有意に関連を認め、AUC0.70、感度は100%、特異度は38.8%であった。ADLでは、トイレ、下衣更衣、入浴、歩行、階段すべての項目において、dual task stepping testの評価結果と関連を認めた. AUCはトイレ0.92、下衣更衣0.83、入浴0.84、歩行0.87、階段0.87であり、どの項目も高い結果であった。感度はトイレが96.2%と最も高かった.本知見は、英語論文にて公開した。 令和3年度には、トイレ動作自立判定のためのdual task評価システムの精度向上のため、回復期脳卒中患者27名のdual task開始時、経過時の区分ごとのdual taskパフォーマンスを、解析ソフトを用いて定量化した。運動課題のみと認知課題負荷直後の運動パフォーマンス変化量は、注意評価スケールと有意に負の相関を認めた。また、バランス機能が良好な者は運動課題のみから認知課題負荷した直後の運動パフォーマンス変化量が有意に低かった。得られた知見は、トイレ動作自立判定のみならず、dual taskトレーニング内容を検討するうえで有用なものであった。 令和4・5年度は上記知見を英語論文にて公開した。
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