研究課題/領域番号 |
20K19468
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
土山 和大 藤田医科大学, 保健衛生学部, 助教 (60780624)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 磁気刺激 / 脳卒中 / 筋萎縮 / 筋力低下 |
研究実績の概要 |
脳卒中片麻痺患者の多くに認められる下肢の筋萎縮は、起立や歩行を阻害する重要な要因である。片麻痺患者の麻痺側の膝関節伸展筋力および股関節外転筋力は歩行速度や歩行自立度と関連が強く、それぞれの主動作筋である大腿四頭筋および中殿筋の筋萎縮を防止・改善することは歩行を早期に再建する上で重要である。 筋萎縮予防や筋力低下の改善に有効な治療手段である電気刺激療法では、強い筋収縮を誘発できればより高い治療効果が得られるが、皮膚に発生する疼痛のために十分な刺激が与えられないことも多い。大腿部や殿部などは電極を貼付するために肌を露出しなければならず、実施には配慮が必要かつ準備に時間を要することから臨床では積極的には実施されていない。 磁気刺激はパルス磁場による誘導電流によって筋肉内の細胞膜に脱分極を生じさせるため、深層の末梢神経や筋を皮膚に存在する侵害受容器を刺激することなく興奮させることが可能である。さらに、磁気刺激は非金属を通すため、衣服の上からでも刺激が可能であり、大腿四頭筋や中殿筋への刺激も容易であることから、電気刺激に代わる治療法として期待される。 本研究の目的は、末梢神経への連続パルス磁気刺激による筋萎縮および筋力低下に対する治療効果を検証し、歩行再建に有用な治療法を確立することである。 2020年度は健常者の大腿四頭筋へ磁気刺激を行い、最も有効な刺激部位および刺激条件を検討した。刺激部位の検討では、大腿近位1/3、中央、遠位1/3を刺激した場合の膝関節伸展角度を比較し、近位1/3が最も強い収縮が得られることを確認した。刺激周波数は強収縮が誘発できる30Hzとし、刺激強度は被験者が耐えうる最大強度とした。予備実験を含め健常者8名に対して磁気刺激を行い、全員が刺激強度100%に耐えられることが確認された。今後は、片麻痺患者に対して大腿四頭筋および中殿筋への磁気刺激を試みる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の計画では、予備実験を含めて10名の健常者の大腿四頭筋に対して磁気刺激を行い、適切な刺激条件を検討する予定であった。予定していた10名には達していないが、8名の健常者への磁気刺激を行い、適切な刺激条件を検討することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は予定通りに脳卒中片麻痺患者へ磁気刺激を行い、効果を検証する。 研究を行う藤田医科大学病院では、COVID-19の感染拡大予防対策が強化され、申請者が立ち入ることができる病棟や患者の移動制限が生じているため、予定していた脳卒中患者15名への介入および評価(特に三次元歩行分析)に支障が出る可能性がある。そのため、対象者を脳卒中片麻痺者に限局せず、下肢に廃用性筋萎縮または筋力低下を有する患者も含めて磁気刺激の筋萎縮・筋力低下の改善効果を検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は本研究計画を進める上で必要な磁気刺激装置をはじめ、介入や評価に必要な物品のみ購入し、データ解析に必要な物品の購入を行わなかった。2021年度からはデータ解析も開始する予定のため、解析に必要な物品を購入するために研究費を使用する予定である。
|