摂食嚥下障害患者では嚥下反射が起こりにくくなることが多い.頸部に干渉波電気刺激(IFCS)や弱い磁気刺激を加えるという侵襲のない咽頭刺激が嚥下反射惹起不全を改善する効果があるか検証した. 2020年は,IFCSを行うにあたり,健常者における最適な刺激条件を検討した結果,感覚閾値の刺激を20分間行う方法が最適であると考えられた. 2021年度は,健常者の嚥下機能に対するIFCSの効果を検証するために,健常成人20人を対象としたランダム化クロスオーバー試験を実施した.介入はIFCS20分間, sham刺激20分間とし,介入の前後で反復唾液嚥下テスト(RSST),150ml 水飲みテスト (150ml WST) を評価した.RSSTは介入の違いによる有意差は認めなかったが,150ml WSTにおけるswallowing capacity(ml/s)はIFCSの介入によってsham刺激と比較して有意な改善を認めた. 2022年度は,健常者の嚥下機能に対するSPM(spinning permanent mahnet; われわれが開発した永久磁石の回転によって磁場を発生させ,末梢神経に運動閾値未満かつ感覚閾値未満の刺激を行う装置) の効果を検証するために,健常成人20人を対象としたランダム化クロスオーバー試験を実施した.介入はSPM刺激20分間,sham刺激20分間とし,介入の前後でRSST,150ml WSTを評価した.RSSTは介入の違いによる有意差は認めなかったが,150ml WSTにおけるswallowing capacity(ml/s)はIFCSの介入によってsham刺激と比較して有意な改善を認めた. 本研究結果により,IFCSとSPM刺激は健常者の液体嚥下のパフォーマンスを改善させる可能性があることがわかり,今後の摂食嚥下リハビリテーションに非常に有益であると考えられる.
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