研究課題/領域番号 |
20K19472
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
大松 聡子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 リハビリテーション部(研究所併任), 作業療法士 (10824849)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視野障害 / 視空間性注意障害 / 運転シミュレータ / 定量的評価 / リハビリテーション / 経頭蓋直流電気刺激 |
研究実績の概要 |
脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍などの脳損傷により視野及びより高次な視覚障害が生じるが、脳の損傷および残存する領域・経路の同定や、残存機能の確認は、リハビリテーション介入の指針を立てる上で非常に重要である。本研究では従来の視機能計測、視野計測に加え、眼球運動計測と視覚刺激への反応課題等の行動特性の評価を行い、さらにMRI解剖画像による損傷部位の同定と拡散テンソル画像を用いた損傷経路および残存経路の同定を行うことで、視野障害の発現メカニズムを明らかにすることを目的とする。加えて、損傷経路の部分残存が確認できた症例に対し、同経路の神経結合を高めるための経頭蓋直流電気刺激と視覚刺激を併用したリハビリテーション介入を実施、その効果検証を行うことを目的とする。 視野障害15名の視線計測と反応課題を含めた行動検査とMRIを計測し、そのうち7名に対して短期集中リハビリテーションを実施した。対象者の行動特性や情報処理戦略を把握するため、視線計測のみでは不十分であったため、視線と頭頸部回旋の動きを同時に計測できる反応課題のシステムを構築し、視野や見えにくさに対する代償戦略の定量化を行った。顕著性が高い刺激に対する視線応答が保たれている場合、頭部回旋運動による代償動作は少ない傾向を示した。 その他、視覚障害や視空間性注意障害を有する対象者は運転再開が困難となるケースが多いことから、運転再開に向けた評価および残存機能の把握が重要な視点となる。そのため、より実践的な行動把握に向けて自動車運転映像視認時の頭部運動と視線を同時に計測できるシステムを作成(情報取得運転シミュレータ)し健常群と脳血管疾患後の視覚・視空間性注意障害がある群(症例群)と再開群の計測をおこなった。健常群や再開群と比較し、疾患群では特に交差点など周囲の確認を要する場面での頭部運動範囲の狭小化を認めており、探索空間の狭小化を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
短期集中リハビリテーションや視線計測・反応時間検査は眼科からの紹介症例が少なく、症例数が増えていない。 一方、頭部運動と視線の同時計測システムによる運転シミュレータは協力施設も増え症例群30名、健常群20名程度計測できている。また運転行動と情報取得における関連性を検討していくため、ハンドルやブレーキ操作といった模擬運転動作を追加して記録を残すシステムを構築したため概ね順調に進んでいると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
経頭蓋直流電気刺激との併用トレーニングに関しては、両側半球損傷を除く左右半球どちらかの損傷者での検証を追加し、どのような方に変化が期待できるかを確認していく。 頭部運動と視線の同時計測システムによる情報取得に特化した運転シミュレータに関しては、ハンドルやブレーキ操作といった模擬運転動作を追加して記録を残すことで、運転行動と情報取得における関連性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンラインとなり旅費が不要となったこと、また非侵襲的脳刺激介入の被験者増えず謝金費がかからなかったため、繰越となった。次年度はCOVID19が5類感染症へと移行したため、国際学会への参加や協力機関への計測の他、最終年度のため論文投稿費に使用する。
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