脳卒中や頭部外傷、脳腫瘍などの脳損傷により視野及びより高次な視覚障害が生じるが、脳の損傷および残存する領域・経路の同定や、残存機能の確認は、リハビリテーション介入の指針を立てる上で非常に重要である。本研究では従来の視覚検査に加えて、視線計測や脳MRI画像による評価の後、損傷経路の部分残存が確認できた症例に対し、同経路の神経結合を高めるための経頭蓋直流電気刺激と視覚刺激を併用したリハビリテーション介入を実施、その効果検証を行うことを目的とする。視野障害15名の視線計測と反応課題を含めた行動検査とMRIを計測し、そのうち7名に対して短期集中リハビリテーションを実施した。視野範囲の拡大の程度は、大きくばらつきを認めたが、一次視覚野や脳梁損傷を免れている人は比較的改善を認めた。眼科診療における中枢疾患症例の受け入れ減少の影響を受け、被験者が予想以上に得られなかったため、画像解析の方法の追加検討を行い、拡散テンソル画像よりも詳細に神経樹状突起密度や分散が把握できるNODDI計測環境の構築を行った。 加えて、視覚障害や視空間性注意障害を有する対象者は運転再開が困難となるケースが多いことから、運転再開に向けた評価および残存機能の把握が重要な視点となる。そのため、より実践的な行動把握に向けて自動車運転映像視認時の頭部運動と視線を同時に計測できるシステムを作成(情報取得運転シミュレータ)し健常群と脳血管疾患後の視覚・視空間性注意障害がある群(症例群)と再開群の計測をおこない、解析の半自動化を行った。実際、視野障害がある場合でも病識や症状に対する代償方法の定着の程度によって探索パターンはことなっていた。
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