研究課題/領域番号 |
20K19474
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
福士 勇人 青森県立保健大学, 健康科学部, 講師 (20738497)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 視床下部 / 呼吸リズム / 呼吸困難感 / オレキシン |
研究実績の概要 |
呼吸困難感とは,呼吸を行うことが容易ではないという感覚,あるいは呼吸に伴う不快感・苦痛をいう.慢性閉塞性肺疾患,肺線維症などの呼吸器疾患に罹患した患者は,労作時に体内酸素レベルが低下し,呼吸困難感を知覚することが少なくない.呼吸困難感は患者の活動量を低下させ,ひいてはQOL低下を引き起こす要因となるため,患者の呼吸困難感を軽減させることは呼吸リハビリテーション実施上,極めて重要である.しかし,現時点で呼吸困難感の知覚機序は十分には解明されておらず,その緩和法も確立されていない. 研究代表者は,「下部脳幹部の呼吸中枢からの出力指令であるmotor commandの上行性コピー情報が視床下部に伝わることで呼吸困難感が知覚され,呼吸困難感が知覚されるとオレキシンニューロンを含む視床下部ニューロンから下部脳幹部へ神経促進性ドライブが投射され,呼吸神経出力が増強される」という呼吸フィードバック調節システムの存在を仮説として提唱し,その場合に存在するはずの「延髄で形成された呼吸活動運動指令の上行性コピー投射(運動指令随伴発射)」を実証することに取り組んできた.具体的には,延髄で形成される呼吸リズムに同期して活動する視床下部の領域を同定するとともに,同定した領域が延髄呼吸リズム形成機構からの神経投射を受けていること,および同定した領域から延髄にオレキシンニューロンが投射していることを解剖学的に確認することに取り組んできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において,本年度は「視床下部のオレキシンニューロンの存在する領域が延髄の呼吸リズム形成機構と解剖学的につながっているかを確かめること」を目標にしていた. 本年度は,成熟マウスを用いた実験から延髄腹側の中でも呼吸リズム形成機構において特に重要な役割を担うparafacial respiratory group/retrotrapezoid nucleusおよびpreBotzinger complexという領域にオレキシン受容体OX2Rが発現していることを昨年よりも精緻に確認することができた.このことから,現在,本研究はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画で当初目標にしていた「視床下部のオレキシンニューロンの存在する領域が下部脳幹部の呼吸リズム形成機構と解剖学的につながっている」ことを確かめることができたので,次年度はこの成果を発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 次年度使用額が生じたのは,物品費,旅費の各支出額が,研究代表者の工夫により当初の予算額より抑えられたためである. 次年度使用計画: 次年度は,本年度までに得られた成果の発表を行う予定であり,次年度使用額は次年度に有効に使用される予定である.
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