研究実績の概要 |
超高齢社会を迎える本国において, サルコペニア(加齢性筋減弱症)や不活動に伴う廃用性筋萎縮症患者の増加が問題となっている. このような健康課題を解決するためにも骨格筋量の調節メカニズムを明らかにすることは重要な課題である. これまでタンパク質分解系であるプロテアソームが骨格筋維持に不可欠であること明らかにしてきたが, その詳細なメカニズムについては不明であった. 本研究ではプロテアソームによるタンパク質分解由来のアミノ酸は新規タンパク質合成の材料としては再利用されるといったアミノ酸リサイクルの存在を検証した. その結果, 予想に反し, プロテアソームによるタンパク質分解由来のアミノ酸は新規タンパク質合成の材料としては再利用されないということが明らかになった. しかしながら, 本実験結果は分解後6時間という1時点での評価しかできていないこと, また, 単一の標識タンパク質を用いた評価であるため, 今後はさらに複数の標識タンパク質を用い, 長期培養することでアミノ酸リサイクルの存在有無を目指していく. さらに, 本年度は骨格筋におけるペプチド分解酵素機能の解明に向けた研究にも取り組んだ. マウス筋芽細胞において, ペプチド分解酵素であるアラニンアミノペプチダーゼやピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼの機能抑制は細胞死を引き起こすことや, 細胞周期の異常, 細胞極性低下による筋管細胞の異常形成など様々な表現系を示すことを明らかにした. 今後は他のアミノペプチダーゼの機能について検証していき, さらなる研究の発展を目指していく.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は, タンパク質分解由来アミノ酸がどのように再利用されているのかを解明するために, 骨格筋細胞におけるアミノペプチダーゼ機能の解析を進めていく. また, シグナル伝達経路との相互作用の解明も目指し, 網羅的な解析を実施していく.
|