研究実績の概要 |
超高齢社会を迎える本国において, サルコペニア(加齢性筋減弱症)や不活動に伴う廃用性筋萎縮症患者の増加が問題となっている. このような健康課題を解決するためにも骨格筋量の調節メカニズムを明らかにすることは重要な課題である. これまでタンパク質分解系であるプロテアソームが骨格筋維持に不可欠であること明らかにしてきたが, その詳細なメカニズムについては不明であった. 本研究ではプロテアソームによるタンパク質分解由来のアミノ酸の再利用性について検討する. これまでの研究成果より, タンパク質分解由来アミノ酸はタンパク質合成には再利用されない可能性が明らかとなった. そこで分解由来ペプチドを処理するアミノペプチダーゼの働きに着目することとした. その結果, 筋芽細胞におけるアミノ酸飢餓ストレスやプロテアソーム阻害, オートファジー阻害は種々のアミノペプチダーゼ遺伝子発現を変動させることを明らかにした. 興味深いことにそれぞれの上記3つの条件間で変動するアミノペプチダーゼ遺伝子は異なっており, 依存的な制御機構の存在が考えられる. これらの結果は細胞内におけるタンパク質・アミノ酸代謝の維持にアミノペプチダーゼが寄与する可能性を示唆する. さらに網羅的なアミノペプチダーゼ遺伝子発現抑制実験の結果, 筋芽細胞の正常な筋分化に必須となるアミノペプチダーゼ分子を7つ同定した. 今後はアミノペプチダーゼに焦点を当てたアミノ酸リサイクル機構の解明に向けて取り組みたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨格筋細胞であるC2C12筋芽細胞において, タンパク質分解系の一つであるユビキチン・プロテアソーム系によるタンパク質分解とその分解産物の再利用性について検証することができた. さらに, タンパク質分解産物であるオリゴペプチドをアミノ酸へと分解するアミノペプチダーゼが筋分化に影響すること, さらにはその分子機序の一端を解明することができた. 以上のことから, おおむね順調に進展している.
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