研究課題/領域番号 |
20K19480
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
鈴木 真美子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (60449030)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 運動 / 脳 / 神経活動 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究では、運動が行動遂行能力の向上を引き起こすメカニズムを解明することを目的とし、神経活動依存的に蛍光タンパク質を発現する遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルスを使用した遺伝子操作技術により、マウス脳全体の神経活動を可視化することで、運動がどの脳領域の活動を変化させるか調べた。 本年度までの研究実施計画は、①マウスにノーズポークし続けると報酬が獲得できるという課題を学習(強化学習)させ、運動によってノーズポークの時間が増加するか調べる、②運動により課題遂行中に活動する縫線核のセロトニン神経細胞および黒質のドーパミン神経細胞は増加するか調べる、③運動で活動する神経細胞と課題遂行中に活動する神経細胞は同一であるか調べることであった。しかしながら、本年度までにマウスに強化学習をさせることはできておらず、計画①と②③で行う予定であった課題遂行中に活動した神経細胞を標識するに至っていない。一方で、自発的に1時間もしくは24時間運動させた後に、運動による活性化が予測される運動野、線条体、扁桃体、さらにドーパミン神経細胞が存在する黒質、セロトニン神経細胞が存在する縫線核でのGFP陽性細胞数について調べた。その結果どの領域でもGFP陽性細胞の増加は観察されず、黒質のドーパミン陽性細胞や縫線核のセロトニン陽性細胞の活性化も見られなかった。 自発的運動と強制運動では、学習に異なる効果があり、また運動強度によっても認知能力への影響が変わることが報告されている。本研究で行った自発的な運動では運動強度や持続時間が適切でない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アデノ随伴ウイルスベクターを静脈注射し、神経活動依存的に蛍光タンパク質であるGFPもしくはmCherryを発現するように遺伝子操作することで、マウス脳全体で活動した神経細胞を標識する方法について検討した。これにより、1つもしくは2つの刺激に応答する神経活動をGFPもしくはGFPとmCherryの2色で染め分ける方法を確立した。また、ウイルスによる遺伝子導入であることから、ウイルスが感染しにくい脳領域では評価できないが、内的状態に関与する黒質や縫線核、線条体、扁桃体、運動野の神経細胞への感染は問題ないことも確認できた。 一方、マウスにノーズポークし続けると報酬が獲得できるという課題を学習(強化学習)させることはまだできていない。また、前述の方法で自発的な運動を1時間もしくは24時間させたときに活動した神経細胞を可視化したが、顕著な変化は観察できず、今後は強化学習における課題遂行能力を向上させる可能性のある運動についても検討が必要なため、上記のような評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
まずマウスにノーズポークし続けると報酬が獲得できるという課題学習を成立させる。そのために報酬である水をサッカリンに変更し、学習におけるパラメーターの調整を試みる。また、これまで行っていた自発的な運動ではなく、トレッドミルなどを用いた強制運動させることを考えている。そして、最適化した運動によりノーズポークし続ける時間が変化するか調べ、変化した場合には運動により課題遂行中に活動する神経細胞は増加するのか、運動中に活動する神経細胞と課題遂行中に活動する神経細胞は同一の神経細胞かを活動依存的な神経細胞標識法により検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの強化学習ができていないため、強化学習で活性化する脳領域を調べるための実験試薬や解析のためのソフトウェアも未購入である。これらの消耗品を購入するとともに、最適な運動を検討するため、強制的に運動させることができるマウス用トレッドミルを購入する予定である。
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