研究実績の概要 |
運動や栄養摂取が骨格筋に与える効果の解明が進む一方で、摂取した栄養素を処理する消化吸収器官が運動によってどのように影響を受けるかについて、未だ詳細が明らかではない。本研究は、運動が消化吸収機能に与える影響およびそのメカニズムの解明を目指す。消化過程を経た糖やタンパク質は主に小腸において吸収される。吸収された栄養素は門脈と呼ばれる血管を介して肝臓へ輸送され、その後末梢へと供給される。そのため、各組織や末梢血の分析に加えて門脈からの採血を行うことで、吸収機能の評価がより詳細に行うことができると考え、本年度は実験系の確立を目指した。 検討課題1として、実験動物を対象に運動後にグルコースを投与した。投与から15分のタイミングで解剖を行い、門脈血および尾静脈より末梢血を採取した。その結果、投与から15分後に門脈および末梢の血中グルコース濃度が上昇すること、また血中グルコース濃度は末梢血と比較して門脈血において高値を示すことが確認された。続いて検討課題2として、同一個体から経時的に採血を行うため、実験動物に対して門脈カテーテル手術を施した。単回の運動後にタンパク質溶液を摂取させ、経時的(0, 5, 15, 30, 60 min)に門脈から採血を行った。門脈血中の総アミノ酸濃度はタンパク質摂取後5分で上昇、15分でピークを示し、その後徐々に低下することが確認された。これらの結果から、同一個体で経時的に門脈血の採取を行うことが可能となった。今後は、安静および運動後に栄養素を摂取させ、その際の血液および各組織の解析を行っていく予定である。
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