研究実績の概要 |
摂取したたんぱく質は、胃から送り出され十二指腸、空腸、回腸からなる小腸に到達し、その後大腸を経て排泄される。その際に上部小腸である空腸にて、たんぱく質の多くがアミノ酸の形で吸収され、門脈と呼ばれる血管を経て肝臓に送られた後に全身を循環する。 本研究では、高強度運動後にたんぱく質溶液を摂取した際の消化吸収機能への影響を検討した。雄性のICRマウスに対して、安静(Con群)もしくは高強度インターバル運動(Ex群)を行った直後に、たんぱく質溶液(3 mg/g 体重)を経口投与した。投与前、投与後10, 30, 60分のタイミングで、消化管内容物重量の測定と採血(門脈血、末梢血)を行った。 胃内容物重量はCon群と比較してEx群で有意に低値を示した。一方で、空腸内容物重量はCon群と比較してEx群で有意に高値を示した。門脈血中の分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度はCon群と比較してEx群で高値を示す傾向にあった。また尾部採血により得られた末梢血中のBCAA濃度は、門脈血中のBCAA濃度と同様にCon群と比較してEx群で有意に高値を示した。これらの結果は、高強度運動を行うことにより、たんぱく質の消化吸収速度が増加する可能性を示唆するものである。さらに、運動自体によって骨格筋が分解され血液中のアミノ酸濃度が上昇する可能性を排除するため、たんぱく質溶液投与前の値からの変化量を評価した。その結果、末梢血中BCAA濃度の変化量はCon群と比較してEx群で高値を示す傾向にあった。一方で、回腸末端内容物の変化量(吸収不可であった量の指標)がCon群と比較してEx群で有意に高値を示した。 以上の結果から、高強度運動後のタンパク質摂取は、安静時における摂取と比較して消化吸収速度を増加させる可能性が示唆された。
|