研究課題/領域番号 |
20K19482
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
芝口 翼 金沢大学, GS教育系, 助教 (40785953)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋細胞 / ミトコンドリア / microRNA / 栄養素 / 代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では、栄養素がもたらすミトコンドリア機能の向上の背後にマイクロRNA(miRNA)を介した遺伝子発現抑制機構の関与を独自の視点と置き、miRNAsを外的に制御しながらミトコンドリア生合成をより強く上方調節すること(最大化)への可能性について検証することを目的としている。令和2年度は、栄養素によるミトコンドリア生合成の亢進とmiRNAsの動態を明らかにするため、主にC2C12骨格筋培養細胞を用いて検証を行った。得られた結果は以下の通りである。 ①C2C12筋管細胞にロイシン、または我々が開発したアミノ酸混合液を添加すると、いずれの場合においても添加24時間後においてミトコンドリア関連タンパク質量あるいはミトコンドリアDNAコピー数が有意に増加した。 ②ロイシンに着目し、ロイシン添加24時間後のC2C12筋管細胞のmiRNAs発現量を検討したところ、我々が着目した3つのmiRNAsの内、2つのmiRNAsが対照群と比較して有意に低い値を示した。一方、ミトコンドリア生合成を刺激すると考えられている別の栄養基質(カフェイン)を添加した場合には、着目したmiRNAsの発現量に変化が認められなかった。 ③②の検証で変動した2つのmiRNAsに着目し、予備的にC2C12筋細胞へ遺伝子導入を行ったところ、2つのmiRNAsを一過性に過剰発現した場合にミトコンドリアDNAコピー数が減少し、PGC-1αシグナルに関わるタンパク質のmRNA・タンパク質発現量も低下する傾向にあった。一方、2つのmiRNAを過剰発現させたC2C12筋細胞にロイシンを添加すると、こうした変化が一部救済される傾向が認められた。 これらの結果から、ロイシンによって骨格筋細胞でミトコンドリアDNA量が増加する背後には、ロイシン独自のmiRNA調節機構が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、当初計画していた日程での動物実験の実施が困難となったため、令和3年度に計画していた細胞実験を前倒しして行った。その結果、in vitroモデルにてロイシンによってミトコンドリア生合成が誘導される背景にあるいくつかのmiRNAsを検証することができた。また、次年度以降に動物実験をスムーズに進めるため、筋損傷モデルにおけるミトコンドリア生合成・miRNAsの動態を検証するための予備試験を行い、予備試験を実施するには十分な数の筋サンプルを取得できた。以上のことから、本年度の実施計画についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度採集した筋サンプルを早急に解析し、筋損傷モデルにおけるミトコンドリア生合成・miRNAsの動態を検証するとともに、その結果から栄養基質(ロイシン)摂取開始時期を見極め、筋損傷後に栄養基質を摂取した際にミトコンドリア生合成とmiRNAsの動態がどのように変化するかについて検証を行う。また、本年度実施したin vitroモデルの遺伝子導入実験ではまだ予備的な結果しか得られていないため、今後はサンプル数を増やし、ロイシン由来のミトコンドリア生合成誘導に関与するmiRNAsの分子機序を明らかにしようと考えている。
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