研究課題/領域番号 |
20K19482
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
芝口 翼 金沢大学, GS教育系, 講師 (40785953)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋細胞 / ミトコンドリア / microRNA / 栄養素 / 代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では、栄養素がもたらすミトコンドリア機能の向上の背後にマイクロRNA(miRNA)を介した遺伝子発現抑制機構の関与を独自の視点と置き、miRNAsを外的に制御しながらミトコンドリア生合成をより強く上方調節すること(最大化)への可能性について検証することを目的としている。令和3年度は、in vivoモデル(ラット筋損傷モデル)の構築とin vitroでの栄養素がもたらすミトコンドリア生合成への影響の再検証を行った。得られた結果は以下の通りである。 ①足底筋損傷後のミトコンドリアDNA量は損傷3日後をピークに減少し、その後は時間の経過に伴い非損傷筋レベルへ向けて回復した。しかしながら、損傷28日後の値は非損傷筋の値と比較して低値を示す傾向にあった。 ②足底筋損傷後のミトコンドリア関連タンパク質の発現動態はほぼミトコンドリアDNA量と同様の挙動を示した。しかしながら、減少のピークがタンパク質によって異なり、PDHの場合は損傷3日後、COX-IV、VDACの場合は損傷5日後であった。 ③足底筋損傷後、損傷1日後の時点で筋細胞特異的な酸素輸送担体であるミオグロビンの発現が完全に消失した。その後、損傷5-7日後にかけてミオグロビンが再発現し、時間の経過とともに非損傷筋レベルへ向けて回復した。しかしながら、損傷28日後の値は非損傷筋の値と比較して低値を示す傾向にあった。 ④C2C12筋管細胞へ我々が独自に開発した改良型のアミノ酸混合液を添加すると、添加24時間後においてミトコンドリア関連タンパク質(COX-IV)発現量が増加傾向を示し、ミトコンドリアの膜電位も有意に上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、主にラットの筋再生過程におけるミトコンドリアDNA、ミトコンドリア関連タンパク質、筋細胞特異的な酸素輸送担体であるミオグロビンの発現動態について明らかにした。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響による研究以外のエフォートの増加や、本実験モデルにおけるミトコンドリアDNA・miRNAの定量を可能とする実験条件の確立に想定以上の時間を要したこともあり、当初計画していたmiRNAsの動態の検証やin vivoでの栄養基質添加実験がまだ実施できていない。したがって、本研究の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度確立したmiRNAの定量条件を基に、in vivoモデル(ラット筋損傷モデル)におけるミトコンドリア生合成・miRNAsの動態を早急に検証する。その結果を踏まえ、in vivoモデルにおける栄養基質(ロイシン、またはアミノ酸混合液)の摂取開始時期を見極め、筋損傷後に栄養基質を摂取した際にミトコンドリア生合成とmiRNAsの動態がどのように変化するか、ミオグロビンとの関連性も含めながら検証を進める予定である。最終的には3ヶ年の研究成果を取りまとめ、成果報告を行う。
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