研究課題/領域番号 |
20K19488
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
松本 賢太 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (50843364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | シナジー / 音信号 / FPGA / 野球 / サッカー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、運動制御に関わる「シナジー」という神経生理学の知見とトレーニング理論とを結びつけ、巧みなシナジーを獲得する方法を明らかにすることである。そのために、「①音信号による教示訓練を実施したときにシナジーがどのように変化するのかを明らかにし、運動教示とシナジーの関係性を実験的に示す.②熟練者のリズムを教示することで、シナジーにどのような変容を及ぼすかを明らかにし、効果的な運動学習法を提案する.」という流れで研究を進める。前年度までに,①に関して,音信号による教示訓練の実験を実施し,運動教示とシナジー仮設の中核にあるリズムとの関係性を示した.本年度は,②の内容を実施した。具体的には「Ⅰ 熟練者の動作計測実験」,「Ⅱ 非熟練者への熟練者リズムの教示実験」を実施した。以下、その詳細を説明する。 Ⅰ 熟練者の動作計測実験 前年度までに,体幹部から下肢への協調に着目し,サッカーのシュート動作を計測した.本年度はこれに加え,下肢から上肢への連動に着目し,熟練者を対象に野球のピッチング動作を計測した.そして,ピッチング動作から協調動作を抽出し,ピッチングに関わる複数の独立した協調動作(シナジー)を明らかにした.また,非熟練者と熟練者の協調動作の違いを示したので,その内容を国内にて発表予定である. Ⅱ 非熟練者への熟練者リズムの教示実験 野球のピッチング動作を対象に非熟練者へのリズム教示実験を実施した.具体的には,抽出した協調動作の時系列に着目し,振幅と音階を対応させ熟練者リズムを音信号に変換した.その音信号に合わせて非熟練者に熟練者のピッチング動作を模倣させ,熟練者のリズムを教示した.この模倣を継続して実施することで,協調動作がどのように変化するのか調査した.実験期間は1か月とし,週2回の計8回のピッチング動作を計測した.今後は取得したデータの解析を進め,シナジーの変容を明らかにしてく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、実験開始に遅れが生じたため、進捗はやや遅れている。なお、本年度においては、「Ⅰ 熟練者の動作計測実験」,「Ⅱ 非熟練者への熟練者リズムの教示実験」を実施し,各進捗は各々以下となる. 「Ⅰ 熟練者の動作計測実験」:(完了) 本年度は熟練者の野球のピッチング動作を計測した.ピッチングにおけるボールリリースの局面を抽出するために,指先にマーカを配置するとともに,野球ボールに反射テープを貼付けることで,より詳細にピッチング動作を解析できるように工夫した.この実験系の確立および被験者確保に時間を要したものの,年度内に実験を終了し一定の成果を得た. 「Ⅱ 非熟練者への熟練者リズムの教示実験」:(継続中) 野球のピッチング動作を対象に,非熟練者に熟練者のリズムを教示する実験を実施した.熟練者の動作から協調動作を抽出し,その時系列の振幅と音階を対応させることで,熟練者のリズムを音信号に変換した.具体的には,協調動作の抽出および音信号への変換に関しては,MATLABを用いてソフトウェアを開発した.そして,FPGAを用いてこの情報を音に変換するハードウェアを開発し,リズムの教示実験系を構築した.これら,新たに構築した実験系により,非熟練者5名を対象に継続して教示実験を実施し,モーションキャプチャを用いて3次元位置座標データを取得した.今後は取得したデータを解析し,シナジーの変容を明らかにしていく. 以上より,「Ⅱ 非熟練者への熟練者リズムの教示実験」が継続中であることから,進捗は遅れているものの,実験遂行が見込めることから,進捗状況は「やや遅れている」とする.
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今後の研究の推進方策 |
今後は非熟練者への教示実験の解析および新たにサッカーのシュート動作に関して実験・解析を実施してく.まずは,本年度に計測した野球のピッチング動作の熟練者リズムの教示実験結果を解析に,本教示訓練の効果およびシナジーの変容を明らかにしていく.また,サッカーのシュート動作に関しても熟練者のシナジーを明らかにし,非熟練者に熟練者のリズムを教示し,シナジーの変容を明らかにしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
今般の新型コロナウイルス感染症の影響により,実験開始に遅れが生じたため,進捗はやや遅れている.今後の実験実施にあたり,被験者への謝金支払い及び成果発表のために,次年度使用額が生じた.
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