研究課題/領域番号 |
20K19489
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
金 芝美 日本医科大学, 大学院医学研究科, ポストドクター (00868177)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NAD+ / 海馬 / 定期的運動 / 身体不活動 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
NAD+生合成の主要酵素NAMPTは細胞内型(iNAMPT)と細胞外型(eNAMPT)が存在し、主に脂肪細胞から細胞外小胞中に含まれた形で血中に分泌されるeNAMPTが様々な臓器に取り込まれてNAD+合成に貢献する。近年、加齢に伴いeNAMPTの分泌が低下し、脳のNAD+合成を低下させることから、本研究は、定期的な走運動が脂肪組織からのeNAMPT放出を高めて脳内NAD+量を増加させ、このことが身体不活動による認知機能の低下やうつ様症状の発症の予防に貢献するか否かについて解明することを目指す。今年度は、先ず脂肪組織から循環血中へのeNAMPT放出を高める最適な運動条件を探るために、一過性のトレッドミル走運動による血漿eNAMPT量の変化をタイムコースで観察し、かつ運動強度と関係させて検討した。雄のC57BL/6Jマウスに一過性の中強度(20m/min、60分)、高強度(20m/min~疲労困憊、約30分)トレッドミル走運動を課し、運動前、運動1、2、4時間後に採血し、血漿eNAMPT量をWestern blot法により定量した。その結果、運動前と比較して中強度運動2時間後でeNAMPT量の有意な増加が認められた。しかし、高強度運動1時間後ではeNAMPT量が増加する傾向を示したものの、いずれも統計的な有意差は認めなかった。これらの結果から、一過性の中強度走運動は脂肪組織から循環血中へのeNAMPT放出を高めることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年1月より世界的COVID-19感染症の蔓延により、感染予防のため当該年度の実験は中止となったため予定より遅れている。総じて(3)やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、一過性の中強度トレッドミル走運動が血漿eNAMPT量を有意に増加させることを見出した。令和3年度は、前年度実験を継続する。一過性の低強度(10m/min、60分)トレッドミル走運動を課し、前年度と同様にタイムコースで血漿eNAMPT量の変化を検討する。血漿eNAMPT量の増加をもたらす最適な運動条件を決定し、その運動条件下の定期的な運動が不活動由来の認知機能低下およびうつ様症状の発症の予防効果をもたらすか否か、さらに、その効果に海馬のNAD+量が関係するか否かについて検討する。実験条件として、雄のC57BL/6Jマウスを(1)対照群(2)不活動飼育群(3)不活動飼育+運動群の3群に分ける。不活動飼育群には、本研究室で考案したマウス用の通常飼育ケージを6等分したケージで飼育する。(3)群には、上述の血漿eNAMPT量の増加をもたらした最適な運動強度で週3回、1時間のトレッドミル走を行わせる。この条件で20週間飼育後に行動実験により認知機能および不安、うつ様症状の発症を評価する。あわせて、海馬の神経新生との関係を調べる。得られた成果は国内での発表と英文学雑誌への公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、当該年度の実験は計画通り遂行することができなかったため。次年度使用額を引き続き、本研究課題に必要な物品や消耗品の購入に利用する予定である。
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