2022年度に計画していた研究である「スポーツ参加と幸福感の関係の検証」については、関東圏の大学生アスリートを対象に行なった。今年度も新型コロナウィルスの影響により研究計画の微修正を余儀なくされたものの、多くの大学部活動のスタッフならびに顧問を務める先生方のご協力のもと、オンライン調査などを効果的に用いて一連の研究を遂行することができた。 過去2ヵ年で完了した研究では、スポーツ観戦により心理的資本が向上し、その結果として幸福感が向上することが大規模スポーツイベント開催地の住民(ラグビーワールドカップ)ならびに地元のプロスポーツチームのファンを対象に示された。スポーツ観戦という研究コンテクストにおいては、スポーツイベント(プロスポーツチームを含む)は人々の幸福感(ウェルビーイング)に好影響を与えることが示唆され、その心理的プロセスに関しては、心理的資本(希望、楽観性、レジリエンス、自己効力感)が重要な仲介変数になることが明らかとなった。 本年度の研究では、幸福感(ウェルビーイング)が向上することで、どのような結果要因が刺激され得るのか探索した。最終年度に行われた関東圏の学生アスリートを対象にした調査では、組織市民行動(仲間を助けたり、組織のために建設的に働きかけたりする行動)に着目して検証を行なった。その結果、高い幸福感(ウェルビーイング)を示した学生アスリートは、自らが所属するチームのメンバーに対しても建設的に働きかけ、チームがより良く機能するように行動することが分かった。幸福感(ウェルビーイング)がバズワードとして認識され始めているが、その結果要因に関する知見を蓄積することは、今後のウェルビーイング研究を加速させる上で重要である。本プロジェクトはインパクトのある学術雑誌に既にオンライン公開中である。全体を通して本研究は順調に進められ設定された目標は達成されたと言える。
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