研究課題/領域番号 |
20K19498
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横川 拓海 京都大学, 農学研究科, 助教 (80844323)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 運動 / 海馬 / Arcadlin / シナプス |
研究実績の概要 |
本年度より研究代表者が京都大学大学院農学研究科に異動したため、本研究に必要な生化学解析(real-time PCR法・ウェスタンブロット法)ならびに行動学解析(オープンフィールド試験・高架式十字迷路試験・強制水泳試験・Y迷路試験・バーンズ迷路試験)の立ち上げを実施した。また、昨年度、新型コロナウイルスによる大学の入校制限などにより、本研究に必須であるArcadlin ノックアウトマウスの系統が途絶えたため、再入手のための手続きを進めた。 自発性走運動によるArcadlin発現応答のタイムコースを確認するために、自発性走運動後1日・1週間・4週間・8週間の海馬における、Arcadlinをはじめとする最初期遺伝子によりコードされているタンパク質の発現量をウェスタンブロット法により測定した。その結果、Arc・Egr-1・FosBに関しては、1日から1週間のタイムコースでも発現量の増加が見られた一方、Arcadlinに関しては、4週間と8週間のタイムコースでのみ発現量の増加が観察された。従って、最初期遺伝子にコードされているタンパク質の中でも、運動応答性が異なるとの結果を得ている。また、比較的長期的な運動介入に伴うArcadlinの発現増加は、興奮性シナプス分子の発現変動のタイムコースと近似していた。従って、先行研究により示唆されるArcadlinの分子機能を考慮すると、長期的な運動トレーニングに伴う海馬シナプスの変化にArcadlinの増加が関与している可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述の通り、研究代表者の異動があったため、実験系の立ち上げと共に、ノックアウトマウスの再入手に時間を要している。一方で、生化学解析により自発性走運動によるArcadlin発現誘導のタイムコースに関する詳細な知見が得られている。以上より、上記の判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
野生型ならびにArcadlinノックアウトマウスに対して、海馬Arcadlinの増加が観察された4から8週間の自発性走運動を施す。運動期間終了後、行動解析を実施することで、情動・学習能力への影響を評価する。また、脳サンプルの生化学解析・組織学解析によりシナプス分子の発現量ならびに翻訳後修飾状態を測定することで、その分子機序を探索する。
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