研究実績の概要 |
申請者は、運動といった骨格筋への負荷によって筋細胞内Ca2+シグナルが急速に活性化することを発見し、この負荷依存的なCa2+シグナルの活性化が、筋肥大を始めとした負荷依存的なシグナルの活性化の起点となることを明らかにしてきた(Ito N et al., Nat Med. 2013. Ito N et al., Channels. 2013. Ito N et al., Int J Mol Sci. 2018.)。本研究では、申請者が開拓してきた”骨格筋Ca2+シグナルの活性化”が運動依存的なマイオカインの分泌に与える影響を明らかにする。そしてこの分子機構の破綻が、加齢依存的なマイオカインの分泌不全を招き、サルコペニアおよび加齢に伴う代謝・多臓器相関不全を誘引するという仮説を検証し、サルコペニアに対する創薬技術基盤を構築する。
マイオカインの分泌に関わる生体内代謝物と運動の関係、また生体内代謝物のターゲットとなるCa2+チャネル・陽イオンチャネル・トランスポーターの同定を目指した。その結果、解糖系最終産物の一つである乳酸によって細胞内Ca2+濃度が上昇することがわかった。また、乳酸の上昇によってIL-6といったマイオカインの発現が上昇すること、タンパク質合成系に関わるmTORが活性化されることがわかった。 乳酸は筋小胞体からのCa2+の放出を促進することがわかったため、乳酸のターゲットとなるCa2+チャネルの同定を目指した。しかし、筋小胞体に局在する一般的なCa2+チャネルであるリアノジン受容体やIP3受容体は乳酸のターゲットではないことがわかった。今後、より広範なCa2+チャネルを標的とした検証を進めていく必要がある。
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