研究課題/領域番号 |
20K19510
|
研究機関 | 北翔大学 |
研究代表者 |
吉田 昌弘 北翔大学, 生涯スポーツ学部, 准教授 (30404776)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 筋疲労 / 筋活動 / 音刺激 / フィードバック / スポーツリハビリテーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,1)運動疲労により低下した筋活動を、音(聴覚情報)によるフィードバックを用いて即時的に賦活する手法を確立することと、2)その手法を活用したスポーツ外傷の予防効果を検証することである。 令和4年度は,令和3年度に新型コロナウイルスによる影響で着手が遅延した「評価手法の確立」を目指し、疲労課題プロトコルおよび筋疲労判定の基準構築に取り組んだ。予備実験を繰り返し、疲労課題プロトコルを設定し、基礎データを収集することができた。今年度の予備実験では、疲労課題プロトコル実施中には筋活動が高まること、実施後にはパフォーマンスが低下することが確認された。R5年度は、これらの研究実績を元に、本データの収集と解析に努める予定である。 また、パフォーマンスの向上・低下を判断するテスト(Functional performance test)の妥当性を検証する過程で、テストを一部改編することで、本来のテストがターゲットとする関節以外に機械的ストレスが加わる現象も明らかになった。これらの現象は、当初の研究計画には盛り込まれていなかったが、臨床上、有益な知見であると判断されたためデータの分析を進めた。これらのデータは、R5年度開催予定の国際学会に投稿し、口頭発表として採択された(European College of Sport Science, 2023年7月開催予定, 開催地:フランス・パリ)。 今後は、疲労課題プロトコルにおけるフィードバックの効果判定が目標となるため、介入前後のデータ検証を進める。計測データから、疲労状況により低下した筋活動が、フィードバックによりどの程度改善するかを明らかにし、臨床応用へ向けた基礎データを構築する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、計画1-2年目(R2-3年度)に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う北海道内の緊急事態宣言発令およびまん延防止等重点措置の発令により活動を大きく制限され、当初の計画が遅延した。 R4年度は、自治体レベルの行動規制も緩和され、所属機関のレベルも緩和されたものの、これまでの遅れを改善するには至らず、計画通りに進めることは困難であった。特に、本研究は運動(疲労)を伴う研究内容であり、特性上、マスクを着用することが難しく、実験室内では感染対策に多くの物理的および時間的な制限があった。このため、必要データ数を十分に収集することができず、研究計画全体に遅延が生じている。 最終年度となるR5年度は、新型コロナウイルス感染症が5類に引き下げられ、所属機関の活動も概ねコロナ前と変わらず実施する見通しがたった。安全にデータを収集する環境整備も進み、今後は徐々に多数の被験者を対象に実験を進めることが可能である。これまでの計画で不足したデータを蓄積し、当初予定に近づけるよう研究活動を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,昨年度に引き続き「評価手法の確立・疲労課題プロトコルおよび筋疲労判定の基準構築」と「介入効果の検証・疲労で低下した筋活動量を音フィードバックにより改善可能か?」の両プロジェクトを並行して進め、データ数の確保を目指す。 「評価手法の確立-疲労課題プロトコルおよび筋疲労判定の基準構築」については、R3およびR4年度中の予備実験データからハード面、ソフト面の整備が済み、プロトコルの設定が完了した。また、効果判定を行うテストについても妥当性・再現性の検証が完了し、データ収集を進められる状況である。R4年度中に不足したデータについては、引き続き継続して測定を行い、統計学的分析に必要なデータ収集の完了を目指す。(筋活動の周波数解析による筋疲労中に生じている生体内変化検証, 被験者:健常大学生アスリート20名)。 「介入効果の検証・疲労で低下した筋活動量を音フィードバックにより改善可能か?」については、本データの収集に取り組む。これまでに構築した等速生筋力測定器機を用いたプロトコルにより、疲労課題中の筋活動を表面筋電計を用いてモニタリングする。筋活動が一定レベルより低下した場合(疲労あり)にビープ音で即時に音フィードバックを行い、改善の有無および程度についてデータから明らかにすることを目指す。(被験者:健常大学生アスリート30名)
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、予定していた学会がオンラインに変更になったため旅費の一部が執行未了となった。また、新型コロナウイルスによる行動制限のため予定通りの実験を遂行する目処が立たなかった。これにより、被験者の謝金および測定スタッフの謝金等も執行未了となった。以上の理由により、年度予算に余剰が生じ、次年度への繰り越しが発生した。なお、執行未了分については、R5年度の実験再開に合わせて執行・購入予定である。
|