研究課題/領域番号 |
20K19514
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
関根 悠太 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 助教 (80761353)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 成長 / コンディショニング / 内分泌応答 / 形態 / 成熟度 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,成熟度の個体差が著しい年代における運動能力,運動器の形態および内分泌機能(ホルモン応答)の成長に伴う変化と運動に対する適応について明らかにすることである.本年度は異なる成熟度における形態,運動能力および安静時テストステロン濃度の差異について,同暦年齢カテゴリーに属する日本人若年男子バスケットボール選手を対象に比較を行った.その結果,最大身長発育年齢(Age at Peak Height Velocity; APHV)経過後の群(post PHV群)はAPHV到達前の群(pre PHV群)に比べて形態(身長,体重,大腿直筋の筋厚),運動能力(垂直跳び,20mスプリント)および安静時テストステロン濃度において有意な高値を示した.安静時テストステロン濃度の分類では,高値を示した群の身長,体重および垂直跳びの値は低値を示した群に比べて有意に高かった.また,成熟度と身長,体重,垂直跳び,20mスプリントの間には有意な相関関係が認められた.本研究の結果から,同暦年齢カテゴリー内の日本人若年男子バスケットボール選手における形態,運動能力および安静時テストステロン濃度は成熟度の個体差に影響を受けることが示された. 一方で,これらの結果は横断的な比較によるものであり,特に内分泌学的指標については安静時の唾液中テストステロン濃度のみの比較であった.そこで,運動・トレーニングの適応に成熟度の個体差が及ぼす影響について明らかにするために,取得済みの唾液サンプルを用いて異なる成熟度群(大学生,post PHV, pre PHV)における運動に対する一過性のホルモン応答(テストステロン,コルチゾール,成長ホルモン)について分析,論文執筆および投稿を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は異なる成熟度における形態,運動能力および安静時テストステロン濃度の差異について論文を発表した.また,異なる成熟度群における運動に対する一過性のホルモン応答に関する論文も現在投稿・査読を受けている段階であり,2021年度中の受理が見込まれている. 一方で,新型コロナウイルス感染症に対する様々な方針,対応の影響を受けて従来の研究計画に遅れが生じている.具体的には,調査①で予定していた縦断測定の一部および調査②で実施予定であった中長期的なトレーニング介入と測定,サンプル採取が延期となっている.
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今後の研究の推進方策 |
調査①については,運動に対する一過性のホルモン応答のデータ(査読中)をベースラインとし,取得済みの一部サンプルを解析して報告を行う.調査②(長期的なトレーニングの介入によるホルモン応答の変化)については状況を鑑みた実施を予定しているが,対象者が未成年であることから万全な対策を整えることを前提条件として慎重に研究を進めていく. 計画的な測定や長期的な運動介入が引き続き困難となる可能性が考えられるため,研究計画段階において含まれていなかった若年アスリート(U22バスケットボール競技者)のスポーツ傷害に関する研究報告も行っていく予定である.2013年度から2020年度までの国内エリートバスケットボール競技者(大学生)に生じた傷害のビッグデータの解析を進めており,若年カテゴリーでの受傷や復帰までの過程などの要因が将来的な活動制限に起因する可能性を示唆する結果を得ている.本研究結果については現在国際誌に投稿中であり,今後は若年者のコンディショニング・傷害予防プログラム作成の基盤となる研究活動を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症に対する方針,対応による研究活動(対象者の募集,測定,サンプル採取および分析,国際学会等の発表)の制限や延期に起因する.2020年度中に購入予定であったホルモン分析に用いるキットは推奨される使用期限があり,長期保存を行うことが困難である.状況を鑑みた実施を予定しているため,当初の予定分は2021年度分と併せて今後購入を行う.学会の参加費や旅費等についても,状況が改善次第順次発表を行っていく.また,追加で研究計画に組み込むスポーツ傷害の予防に関する研究の国際誌投稿費および掲載費への充当を予定する.
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