本研究の目的は、①敏捷性と平衡性を複合した新たな転倒回避能力の測定(反応バランステスト)の信頼性と妥当性の検討、②反応バランステストと転倒および転倒関連体力との関連、③転倒予防のための運動実践プログラムの提案により、実用性や安全性の高い転倒回避能力の評価法を確立することである。 2023年度は、高齢者の反応バランステストと転倒関連体力との関連を検討するともに3か月間の運動実践が反応バランステストに及ぼす影響を検討した。反応バランステストは重心動揺計上で立位姿勢をとり、光刺激後に素早く片脚を挙げ、10秒間の片脚立ち姿勢を保持するテストとし、片脚を挙上するまでの時間(片脚挙上時間)および挙上後の片脚立ちの重心動揺を評価した。 高齢者20名を対象に反応バランステストと転倒関連体力(椅子立ち上がりテスト、ファンクショナルリーチテスト、2ステップテスト、足趾把持力、10m歩行)を測定した。反応バランステストの片脚挙上時間と椅子立ち上がりテストに有意な関連がみられ、反応バランステストの片脚立ちの重心動揺とファンクショナルリーチテスト、2ステップテスト、10m歩行に有意な関連がみられた。したがって、反応バランステストは筋力よりも動的バランスとの関連が大きく、転倒回避動作を身に付けるためには筋力よりも歩行などの重心移動をコントロールする力や複合的能力が必要である可能性が示唆された。 また、高齢者10名を対象に3か月間の運動実践を介入し、転倒回避能力に対する運動実践の効果を検証した。効果検証に反応バランステストと転倒関連体力の測定を行ったところ、一部の項目で改善傾向がみられたものの、有意な変化は確認されなかった。運動実践の介入内容の検討や反応バランステスト時の動作の質について検討する必要がある。
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