研究課題/領域番号 |
20K19524
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研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
辻本 典央 福井工業大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20757520)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ランニング / 後足部 / 外反 / モーメント / 足関節中心 / 足圧中心 |
研究実績の概要 |
ランニングの支持期前半において、多くの場合、足部は地面反力による後足部外反モーメント(後足部を外反方向に動かす力)を受ける。このモーメントを過度に受けると、過度の後足部外反動作が導かれ、下肢慢性障害に繋がると考えられている。そのため、後足部外反モーメントをどの程度受けているかを評価することは重要である。 後足部外反モーメントの測定には、通常、地面反力計とモーションキャプチャを用いる。しかし、これらの機器は主に実験室内にて使用されるため、多くの人は簡単に測定することができない。そこで、我々はこれまで、後足部外反モーメントを簡易的に評価する手法について検討してきた。その結果、足関節中心とCOPの側方距離のデータを用いることで、後足部外反モーメントを高精度で評価できることを明らかにした。この手法では、地面反力計の代わりに足圧分布測定器を用いて評価ができるため、実験室以外の場所で多くの人に対してデータを取得することが可能となる。 令和2年度は、より効率的なデータ取得を目指し、さらに簡易的な手法を確立できないかを検討してきた。その結果、ランニング中のデータとしてはCOPデータのみを取得し、体重と立位時の足関節中心の情報と組み合わせることで、後足部外反モーメントを高精度で評価できることを明らかにした。ランニング中のCOPデータは足圧分布測定器により取得可能であるため、この手法ではランニング時のデータ取得の際に、足部にマーカを貼付する必要がないというメリットがある(踵が完全に地面に着かないランナーについては別途方法を検討する必要がある)。この結果は、実際に多くのデータを効率的に取得しようとする際に役立つものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、これまでに構築した後足部外反モーメントの簡易的評価手法をもとに、多くのデータを取得していく予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により、ヒトに対する実験を行うことが難しく、データを取得する機会を得ることがほとんど出来なかった。そのため、年度途中に計画を変更し、これまで取得してきたデータを用い、さらに簡易的に後足部外反モーメントを評価できる指標はないか、検討を行う時間に充てた。その結果、被験者の体重と立位時の足関節中心位置のデータをあらかじめ得ておき、ランニング中のCOPのデータと組み合わせることで、後足部外反モーメントを高い精度で評価できることが明らかとなった。 これまでの手法では、足部にマーカを貼付し、ランニング中の足関節中心の時系列データをモーションキャプチャやビデオカメラによって取得すること、また、COPの時系列データを足圧分布測定器で取得する必要があった。さらに、空間座標系において取得された足関節中心のデータと、足圧分布測定器内の座標系において取得されたCOPデータとを合わせる作業が必要であった。しかし、新たな手法では、ランニング中のデータとしては、足部長軸に対するCOPの側方変位の時系列データのみで良く、そのデータは足圧データによって即座に得ることができる。これにより、ランニング中、被験者には足部にマーカを貼付する必要がなく、また、異なる座標系で取得されたデータ同士を合わせる作業も不要となる。 令和2年度は、実験自体を満足に行うことはできなかったが、このような新たな検討を加えたことで、今後、多くのデータを効率的に取得していくための知見を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、今回新たに導き出した後足部外反モーメントの評価手法の精度検証を行う。また、新たに導き出した手法は、ランニング中の足部へのマーカ貼付が不要というメリットがあるが、踵が地面に完全に着かないランナーについては足圧分布測定器にて足全体の足圧の形を得られず、足部長軸の割り出しが難しい。そのため、足部長軸に対するCOPの側方変位の時系列データを上手く得ることができない可能性があり、その対応について検討する必要がある。例えば、立位時の足全体の足圧の形をもとに、ランニング中の前足部の足圧の形のみから足部長軸を割り出すことが可能であるかを検証する、等である。このような手法の検証や、精度検証を行ったうえで、問題がないようであれば、新たな評価手法を用いて多くのデータを取得していく計画である。仮に、踵が地面に完全に着かないランナーに対して新たな手法が適用できない場合、従来の手法にてデータを取得していく。 また、過度の後足部外反動作はランニングにおいても歩行においても、下肢慢性障害に繋がると考えられているため、後足部外反動作を導く後足部外反モーメントの評価は、ランニングとともに歩行においても重要であると考えられる。歩行であれば確実に踵が地面に着くため、本研究で導いた後足部外反モーメントの新たな評価手法は活用できると考えられる。そのため、場合によっては試技を歩行に変更して、多くのデータを取得していくことも視野に入れて研究を進めていく。
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