研究実績の概要 |
本研究は、糖尿病による認知機能低下の予防と改善に対して、有酸素運動トレーニングとβ-ヒドロキシ酪酸(β-HB)投与が相乗的な恩恵効果をもたらすか検討し、その分子機序を明らかにすることを目的として行うものである。 本年度は、β-HB投与によってβ-HBが海馬内に取り込まれるかを検討した。ラット腹腔内に一定流量で慢性的にβ-HBを投与することが可能な浸透圧ポンプを埋め込み、投与されたβ-HBが海馬内に取り込まれるかを調べた。2つの異なる濃度のβ-HB溶液を、3つの異なる流量と容量の浸透圧ポンプに充填して、ラットの腹腔内に埋め込んだ。2日間の安静後に血液を採取し、頭部にマイクロ波(5kW, 1.7秒)を照射して脳内のすべての酵素を失活させた後に海馬を採取した。血漿と海馬に含まれるβ-HB濃度を測定した結果、どの群のβ-HB濃度にも有意差が認められなかった。この結果より、浸透圧ポンプによるβ-HB投与は海馬に取り込まれているか確認することができなかったため、別の投与方法を検討することとした。 次にラット腹腔内に注射器で直接投与する方法を検討した。3つの異なる濃度(1mg/g, 0.5mg/g, 0.1mg/g)のβ-HB溶液を投与し、投与前、投与15分後、30分後に血漿と海馬のβ-HB濃度を測定した。その結果、1mg/gと0.5mg/gを投与した15分後に血漿のβ-HB濃度が投与前と比べて増加した。海馬では有意な増加を確認できなかったが、先行研究において血中のβ-HBは脳に取り込まれ利用されることが報告されていることから、投与により増加した血中のβ-HBは海馬にも取り込まれることが考えられた。
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